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「や…やってしまった…」

目の前の光景に固まり、冷や汗を流す面々。今目前には恐ろしい光景が広がっている。光邦愛用、大好き、相棒のうさちゃんが紅茶に浸ってしまったのだ。それは環のせい。とははっきり言えない。光と馨に追いかけられるハルヒと環が接触し、テーブルにぶつかり倒れてしまったのだ。強いて言えば光と馨のせい。

「「殿がこぼしたんじゃん」」

「馬鹿者ォ!おまえらがぶつかってきたんだろーが!」

「だってハルヒが逃げるんだもん。せっかく女装させて遊ぼうと思ったのに」

「女装」

そこで悩んじゃいけない、環。竜胆は小さな溜め息を吐いた。

「「見たいでしょ殿も」」

そもそも女装というのは適切な表現ではないのだ。ハルヒしかり、竜胆しかり、男装をいう言葉は合うが女装ではなく正装。

「うああー!見たいがしかし今はそんな状況では!つーかおまえら!そさくさに紛れてその手はなんだ―――!」

「環、うるさい」

「…お客様もいないし騒ぐのは一向に構わんが…いいのか?ハニー先輩が起きる」

その言葉は環、光馨、そしてハルヒまでの動きを止めた。近くのソファーでは光邦がお昼寝中なのだ。

「汚してしまったものは仕方ないでしょう。起こして謝るしか…」

「待て!ハニー先輩に近付くな!」

光邦を起こそうとしたハルヒを慌てて呼び戻し椅子の裏に避難する。

「いいか?これはあくまで伝説なんだが…“ハニー先輩の寝起きがメガトン級に悪い”」

「いいえ、環。それは噂じゃない。目撃者が居るよ。とある情報筋から手に入れた情報なんだけどね…ハニー先輩の寝起きに愛らしさはまず無い。絶対零度の睨みをくらわせ、蛇に睨まれた蛙の如く動けなくなるらしい…」

「「「ひぃぃぃ!」」」

竜胆の言葉にハルヒを除いた三人は顔を青くした。

「見た事ないですよ、今まで…」

「今までが良かったからといって今日もそうとは限らない!その上これは先輩が大好きだった亡きグランマのお手製という噂!」

「いえ、それも噂じゃないよ、有力な情報筋もそうだと言ってた」

その情報筋はどこから…なんて疑問は今の皆からは生まれてこない。

「どちらにしろ常に持っている事から見てもかなり大事な物に間違いあるまい!そんなうさちゃんの変わり果てた姿を寝起きに見せたりしたら……俺達が変わり果てた姿!」

「伝説とか噂とか…どこに確信めいたものが…」

「ちょっとハルヒちゃん。牡丹の君の情報網をなめちゃいけない。本当にそうなんだって。かなり近い人物から聞いたから間違いないよ」

竜胆は自分のサイドの髪をくいっと直した。まぁ、自分は関わっていないからどうでも良いけれど。


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