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次の日竜胆は企画案を考え鏡夜に提出してみせるも即却下された。

「…ねぇ、もう少し優しくして。睡眠時間減らしたのよ?」

「それでこのザマか」

ザマって酷くない!?ザマは酷いわ!竜胆は鏡夜の背中を軽く叩いた。それでもお互い少し機嫌が良いのは自分にしか分からない。環と鹿谷は第一食堂で食事する事はなく、二人でどこかに移動した為に鏡夜、竜胆二人の時間が出来ていたからだ。言わずとも少しばかり気が晴れる。中庭の方が騒がしいとそちらに目を向ければ部員勢ぞろい、その中には鹿谷の姿もあった。

「環。食事が済んだら部室に来れるか」

「鏡夜、竜胆」

「なら、自分も行く。部のパソコンで確認したい事もあるし」

竜胆の言葉に鏡夜は小さく頷いた。

「昨日部に顔を出さなかっただろう。その分の諸連絡だ」

「悪い!すぐ行くよ!それじゃあ鹿谷さんごちそうさま。今日も美味しかったよ」

「え…でもまだあまり召し上がって…あの…じゃあ私も一緒に…」

環が追いかけてくるのが分かった。その中で竜胆は前を見たまま小さく呟く。

「“一緒に”ですって。四六時中一緒じゃなきゃ気が済まないのね」

「やけにつっかかるな」

鹿谷さんの事を考えるのなら私も事も考えてくれないかしらね、竜胆は心の中で皮肉めいた言葉を呟いていた。そして第三音楽室で環は諸連絡の確認。竜胆はその後ろで部のパソコンをチェック。

「置いていかれた仔犬みたいな顔してたな」

「え?」

「鹿谷姫だよ」

鏡夜の言う通りだと思った。恋愛感情とは少し違うと思われるその感情。

「そういえば告白されたらしいじゃない?付き合うの?」

「…ちゃんとその場で断ったよ」

お弁当の事ももうやめようと言ったのだ。だが鹿谷は引かなかった。一緒に居てくれるだけでいいと言うのだ。

「…彼女はつらい事から逃げたくて俺に依存してるんだと思う。でも今の俺には何もしてあげられない。だって彼女を見てて気付いちゃったからさ、俺も。俺もきっと彼女と同じなんだ――…」

仲の良い家族は純粋な憧れ。それがいつからか執着になっていた。大丈夫だと自分に言い聞かせる。絶対壊れない大きな家を作り上げた。

「光に言われた事ずっと考えてたんだけど、きっとこういう事だったんだよな。俺はさあ、仲間ができた事が嬉しくて、それを壊したくないばっかりに自分の理想を皆におしつけて、それにすがってたんだなあって」

環がそこまで考えていた事には鏡夜も竜胆も驚いた。

「だから俺と同じように鹿谷さんが俺にすがって何かをごまかしてるんだとしても、俺には何もしてあげられない。――というよりはわからないんだ」

何をしてあげたらいいのか分からない。環はそう呟いた。竜胆は立ち上がった。そして環の額を自分の胸へ寄せた。

「…環は環らしく居ればいいのよ」

「…俺らしく…?じゃあ竜胆の言う俺らしいって何…?」

「バカね、その悩んでいるのも環らしいと言う事よ」

貴方が悩むのならば私達が全力で助けてあげる。そこに言葉はいらない。お節介だと言われたって関係無い。私達は私達の為に動く。それが貴方の為になるのかは分からない。だって、私達の為だもの。


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