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次の日からホスト部だけではなく、周囲の空気はまるで大きく変わったようだった。

「須王さん。こちらです。お席をおとりしておきました」

2−Aホスト部員三人で第一食堂へ向かえば環を呼ぶ声。

「鹿谷さん!そんな席くらい自分で」

「いいえ。怪我のお詫びに何かのお役に立てて下さい。それで…あの…お口に合うかわからないのですが…」

そこにはお重に入った豪華なおかずが並ぶお弁当。

「これ…鹿谷さんが?」

「はい。料理が好きで…」

「そういえば鹿谷家は関西に料亭を多数お持ちでしたね」

鹿谷の前に座る竜胆はそれをぼんやりと聞き流すようにAランチのサラダを挟んだ。

「はい。昔からお店の調理場で父に料理を教わるのが大好きで…」

「神戸では葵塚学園に通われていたとか。あちらでは一番の名門ですね。なぜ2年生のこの時期に桜蘭へ?」

営業モードの様に話す鏡夜の声ですら竜胆はスルーだ。

「それは…母の意向で…元々母の実家がこちらですし…あの…」

少し寂しそうに言う鹿谷。それに気付いた様な環は彼女の言葉を遮った。

「鹿谷さん。お弁当のお礼によかったら東京を案内しましょう。どこか行ってみたいところは?」

「須王さんが案内して下さるならどちらでも」

環の優しさと言う名のお節介が始まった。鹿谷はそんな環を見て微笑んでいた。今の環の言動からして鹿谷の置かれている状況を知っているに違いない、竜胆はそう思った。そして竜胆は小さく頭を下げて立ち上がり、席を移動した。

「「何してんの、竜胆ねぇ」」

「…環や鏡夜の隣に居る時は私クラスでも結構素なのだけれど、今や環の隣に鹿谷さんが居るのよ?素で話すわけにもいかないし、食事中まで牡丹を演じなきゃいけないと思うと少し疲れる」

竜胆はホスト部員達が集まるテーブルに食べかけのAランチを置いて食事を取る事にした。

「竜胆ねぇ。クラスでの鹿谷姫ってどうなの?」

「どうって、あのまま」

「…やっぱり惚れたか…?」

「「惚れたね…ゼッタイ」」

ヒソヒソ話しながらも視線はやっぱり2−Aの彼等達。

「そりゃー昨日あんな風に身を挺して助けられちゃあねー」

「しかもなにやら彼女が話しにくそうな話題からさりげなくかわしてやるタイミング!」

「あんなん僕だって惚れちゃうよー」

「「おまけに今の殿は何故かバカを封印して超王子!」」


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