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「ハルヒごめん。怖い思いさせてごめん。ごめんな―…」

環に抱きしめられるハルヒ。それを光は引き剥がした。そうして環は誘拐犯達に冷たい視線のまま言う。

「あなた方がした事は許される事じゃない。ただ不当な仕事の打ち切りがあったとおっしゃるなら俺から父に伝えます。何らかの解決策は出してくれるでしょう。ただし今後何かお話があればぜひ会社の方へ部外者には二度と手出ししないと約束して下さい」

「…約束するよ。須王君。しかし仕事の取次ぎは必要ない。いったん店は手放してまたイチからやり直すさ。このバカ共とな」

「親方…!」

傍から見れば良い話なのだろうが、そこに誰も乗っかりはしない。

「御感動中に失礼。話は大体聞かせていただきました。藤岡さん彼等を告訴しますか?」

そう出てきたのは須王の顧問弁護士である高坂。

「しません!」

「これは立派な犯罪ですよ?」

「…ハルヒの希望通りに」

「…わかりました。警察には引き上げてもらいます。それから林さん。よろしければ知り合いの弁護士を紹介しましょうか?お店の再建プランなど一緒に考えてくれるはずですよ?」

そして皆は歩きだした。悪い事になっていなくて良かったが、これからの事も考えなければならない。名家に生まれたからこその大きな苦悩。ただ楽しいだけではいけない。

「ほんっとハルちゃんが無事でよかったねえ〜☆」

「あんたホントに怪我してない?どっか痛くない?」

「うん、大丈…あ、鏡夜先輩ここから浅草って戻れます?」

「ああ車を待たせてあるからすぐに…」

「なーに?忘れ物〜?」

「ちょっと落し物を…」

「これ?」

環が出したのは大トロリングだった。

「あ!よかった。ありがとうございます」

それを受け取ったハルヒは嬉しそうに微笑んだ。

「光、お疲れ〜なんなんだったんだろうねー今日は。もー僕心配しすぎて死ぬかと思ったよ」

「…うん…でも僕の挑発なんかよりずっと威力が…」

「え?」

この事件は何かのきっかけになるのかどうか。竜胆は腕を組み小さく呟いた。

「…鏡夜。あの高坂って弁護士、身辺調査を始めてからだいぶ経つし、あれは環を監視していたに違いないわ」

「ああ。誘拐事件は偶然だったかもしれないが、な」

鏡夜は橘に高坂をマークするように指示する。徹底的に調べあげるしかない。何故顧問弁護士が偶然にも雷門で環と同じ日に参拝を?そして偶然にもハルヒが誘拐される事を目撃。

「…やっぱりね。軽く聞いた所によると高坂弁護士は極度の潔癖症。自ら望んで人ごみに入るはずがない」

竜胆は携帯をパチンと閉じた。




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