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「もう逃げられないよ、貧乏人。僕に逆らうとどうなるかよく覚えておくんだね」
すれ違い 傷つけ合う 少年達の心の闇とは…?
「…よせ…光邦。人を傷つける度苦しむのは結局おまえ自身…」
やがて彼等を待つ結末とは 救いの光か
「僕に意見するな崇。またおしおきされたいのか。僕は身分不相応な奴が大嫌いなんだよ」
――それとも――…
「わあああん!ハルちゃんごめんねえ〜!」
堪え切れなくなった光邦は涙を流しながらハルヒに飛びついた。そこに怒声が響く。
「カーット!そこ!台本通りやれェ!!何度言えばわかるんですの!?第一棒読みもいいとこですわ!カメラ一旦止めて!雨!もっと切なげに!」
「…この撮影チームは一体…」
キャラ設定変更がいつの間にか短編映画撮影会の撮影となった。(ちなみに今はオープニングの段階)しかもそこにいるのはわざわざハリウッドから急遽呼んだスタッフ達らしい。その規模の大きさに呆れる程だ。
「なんでバスケなんかやんなきゃなんないワケ」
「大体見ろよ、この台本」
渡された台本をハルヒが読み上げるとそこには“一見光がリードしているが、実は精神的大人の馨の方が攻め”
「「そのままだから却下!!」」
「あら、でもれんげちゃんは一瞬でそれを感じとったって事じゃないの?」
濡れたウィッグを丁寧に拭いている竜胆は二人の背後に立ち微笑んでいた。
「「竜胆ねぇ」」
竜胆を見上げた光と馨の濡れた髪を竜胆は自分のタオルで荒々しく拭いた。
「ちょっと!」
「痛いんだけど!」
「ふふ、さてお姉ちゃんは化粧でも落として来ようかしら。ウォータープルーフでも気持ち悪いわね、流石に」
「ねぇねぇ、竜胆ねぇ化粧全く落ちてないよね?新商品?」
馨はじっと竜胆の顔を見た。
「いいえ、今夏発売予定でまだ開発段階だけどサンプルよ。夏に向けて汗やプール、海でも落ちない最強のやつ」
「へぇーさっすがーって事は撮影にも使えるじゃん。母さんに教えておこー」
よろしく頼むわ、と竜胆は微笑んでから光の頭を撫でた。二人で一緒って考えは結構辛いものよね。例え撮影でもこういった追い討ちはして欲しくなかった。まぁ、本人達が乗る気だったから良いかと折りたたみチェアを光と馨の間に挟みこむように置き、そこに座った。
「何?化粧落としに行かないの?」
「やっぱり止めたわ。この化粧品がどれくらいまで耐えられるか試してみようと思ってね」
ただ光と馨の側に居たいだけよ、竜胆はそう言うように二人に腕を絡ませた。
「「…竜胆ねぇ」」
「なぁに、光、馨」
「やっぱり竜胆ねぇだよ!」
「何、当たり前の事を」
「僕らの事を分かるのは僕ら以外で竜胆ねぇと牡丹にぃだけって事!」
二人の顔を見るとその笑顔は純粋なもの。それは嬉しいんだけど、それって寂しい事に気付いているのかしら?…でも、まだ大丈夫。時間はまだまだあるからね。
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