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「お願いがあるんだけど」
そのお願いとはとても理解出来ないものだった。からかっているのか?と思うくらいだ。だが、今思えば俺はその言葉を聞いておいて良かったと思った。
鳳鏡夜の中学生日記C
「…鳳君。お願いがあるんだけど」
その言葉に俺は驚いた。初めて喋る、と言っていい程のクラスメイトから話かけられたからだ。その相手とは柊牡丹。彼は無口で一匹狼。自分から他人に話しかける事はまずない。幼等部から一緒だったが、やはり話しかけられたのは初めてだった。それは中等部三年を控えた二年の話。
「柊君が?珍しいな。何かな?」
相手は1−Aの生徒。願い事は聞かないわけにはいかない。彼は家柄的にも鳳家と良い縁が気付けるはずなのだ。本格的に親の言いなりになり、家柄人脈重視の俺はそろそろ柊家との付き合いもしておこうと話す機会を伺っていた所。
「週明けからの俺をお願いしたい」
「……は?」
突拍子も無い彼の言葉に俺は一瞬眉間に皺を寄せたが、それはすぐに戻した。そう簡単に本性を出したりなんてミスはしない。
「…週明けの俺はねいつまでも罪の意識が消えなくて、体が少し弱くて、口は悪いし、バカで気が強くて、負けず嫌いで、じゃじゃ馬で、でもとっても優しいんだ。いつも誰かの事を考えてる。優しすぎて悲しくなる…」
こんなに喋る柊牡丹を初めてみた。普段耳にするのは返事の二言程度。授業で当てられても必要最低限の回答だけ。
「………は?」
そしてその言葉の意味も謎過ぎる。俺は再び長い間を作る事になる。
「…言ってあげて欲しい。他人の君から。自分の為に生きろって」
こいつは何を言っている?頭がおかしいのか?そう思うレベルだろう。
「…実はね、俺週明けから女の子になる」
ここまで言われたらおかしい奴認定。きっとこいつは俺をからかっているに違いない。そもそもこういう話ならばする意味も無い。俺は少しばかりの溜め息を本音を零す。
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