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行かないと言った環を残して皆は雪山に向かう事にした。竜胆はその車の中から空を見上げていた。

「竜胆?お前、最近おかしいぞ。どうかしたか?」

「…何て言うのかな。嫌な予感がしてならないのよ」

雪山近くの1−Aが泊まっているロッジに来てすぐに馨と合流した。そして環との事を馨に話す。

「ハ?無自覚のトラウマ?そのせいで殿はこの期に及んでもボケ倒しでハルヒの事自覚できてないってワケ?」

「あくまで推測の域を出てないわよ」

「でもそう考えると色々当てはまるものも多いんだよねぇ…」

それを光が聞いているとも知らずに。

「育った環境のせいか環は“家庭”に並外れた憧れを抱いている。コタツでの団らんや部の家族設定にしてもほとんど執着に近い。環にとって“家族”は絶対で何をおいても守るべき存在なんだろう。じゃあ逆に環にとって“その存在を壊すモノ”はなんだ?もし無意識にでもそこに両親の許されない関係を当てはめているとしたらきっと環はこの先もずっとハルヒへの感情を肯定できない――…」

「そんな…」

確かに環の家庭環境は特別だ。環は無意識に恋愛感情を抑えている様にも思える。それを肯定させようとした光邦の言葉を遮ってまで拒否していた。

「ちょっと待ってよ、鏡夜先輩。そりゃ僕だって殿の家族設定のしつこさには何かあるんじゃないかと思った事あるよ。部の関係を壊さない為の予防線だって考えてた事もあった」

それを竜胆は聞いていたのだ。でも、いつからかその線は無いだろうと考えていた。

「でも…殿があんまりにも…」

「そうなんだよねえ…タマちゃんがあんまりにも…」

「「「あんまりにもバカっぽいから…」」」

だからこそ本当のバカだと思っていたというのに。皆は頭を抱えた。これからどうすれば良いのだろうか。誰かが言うべきか?言わないべきだろう。放っておいた方が良いかもしれない。そして馨と別れて、竜胆鏡夜光邦崇の四人は泊まるホテルへと向かった。車から降りた時竜胆はエスコートとしてボーイの横を通り過ぎて膝が抜けてしまったかの様に突然片膝をついた。

「竜胆?大丈夫か?何もない所で転ぶなんて――…竜胆?」

後ろに居た鏡夜が竜胆の腕を掴み立ち上がらせようとしたが、竜胆は自らの力で立ち上がろうとはしていなかった。目が虚ろで呆然としている。

「竜胆!」

少し声を張れば竜胆は我に返った様に鏡夜の力を借りて立ち上がった。

「竜胆。お前大丈夫か?医者呼ぶか?」

「…いえ、大丈夫よ」

多分。その日、竜胆が彼に連絡したが彼は電話に出る事はなかった。




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