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桜蘭学院に突如沸いた温泉はその日の内にお金の力で本格的仕様になったのが、残念な事に次の日には見事に一夜で土に戻ってしまいました。これは後々語り継がれる事になるだろう。そしてすぐに控えていた1年A組のスキー旅行。それは面白そうだとホスト部員上の学年の生徒達は便乗する話で盛り上がっていたのだが、環は雪山に行かないと言い出したのだ。
「ほんとにハルちゃん達に会いに雪山に行かないの〜?」
「すみません、ハニー先輩」
よく考えたらそれどころじゃない。父親からの宿題で出された読書も溜まっていると本に目を向けていたが、それをよく見ると気付く事がある。
「環、その本逆さまよ?」
「イヤイヤイヤ!これは新しい読書法で――」
「環。どうした。ハルヒと何かあったのか?」
環の様子は何かあったとしか思えないそれ。
「べっ、別にハルヒとは何も…」
ハルヒ“とは”ね。なら次に出てくる人物は決まっている。
「…じゃあ光」
その言葉に環は風化した。
「…そっちか」
環は違うと言い張るもそれはあからさま。この人は嘘をつけない素直過ぎる人間。
「光にハルヒの事で牽制でもされたか?」
それを聞けば環は泣き出した。完全に図星だと言っているではないか。
「みみ皆知っていたのか!?光がハルヒをすっ、すっ」
そこまで言えない程ピュアだったのか。竜胆は額に手をあてながら溜め息を吐いた。
「見てれば分かるでしょうが」
「おニブさんはタマちゃんとハルちゃんくらいじゃないかねぇ〜それで?タマちゃん、今どんな気持ち?」
「い…今まで気付かなくて悪い事をしたなあと…」
「ハルヒちゃんについてはどうなのよ?」
大事なのはそっちでしょうが。そう竜胆が言うと環は心臓が痛いと辺りをのた打ち回っていた。
「なるほど。さすがのお前もついに気付いて…」
「もしや…これが娘を嫁に出す父の心痛というものだろうか…」
それを聞いて一同は呆然とした。思わずは?と聞き返してしまう。
「ああっ!でもハルヒも光を好きだと決まったわけじゃないし、でも光はカワイイ奴だし」
「ね…ねえ、タマちゃん、あのね、それは父親としての痛みじゃないんじゃ…」
「はやり病か!?」
光邦の言葉を遮って環は医者を呼ぶべきかと焦り始める。そして父は知識を身につけないと読書にはしってしまった。呆然とした四人はそのまま須王第二邸を出て行った。
「…あのさあ…僕…勘違いしてたかも…」
「…俺もです」
「…タマちゃんてもしかして――…」
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