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遠くでは見つけた箱を開けてみるが、その中身は殻だったと大きな声笑う声。それと近くのハルヒの声。
「宝物ってさあ…形あるものとは限らないよね」
「ハルヒ?」
「自分はやっぱり環先輩てうらしま太郎のカメみたいって思うなぁ。いつもは皆にからかわれたりして鬼を退治してくれるわけでもないんだけど、でも皆を竜宮城に導いてくれるんだよ」
聞こえてしまうのだ。だってハルヒは何も隠す事をしていないから。でもね、光にとってその言葉は少し酷かもしれないわ。竜胆は心の中で呟いた。
「…ねぇ、光。何かここの土やけにしめってない?こんな深く掘って今更?」
「…光、竜胆ねぇ。もうここ掘っても…ん?何か水が…」
光のスコップが当てた土からは水が溢れでてきた。どうしたと思いじっと見れていればそれはおかしな光景を生む。
「「「ハァ!?」」」
目の前の光景に驚きを隠せない。何故なら水が次々とその穴から出てくる。そしてそれは勢いを増し、噴水のように。
「は!?なにこれ!?」
「うわ熱っ!」
「ま…まさか…!」
どんどん溢れていく水ではなくお湯は勢い止まらず辺りを濡らしていく。それはまさかの温泉だったのだ。一番近くに居た竜胆はその場に尻餅をついてお湯を浴び続けていく事になる。
「竜胆!」
「大丈夫か!?」
環や鏡夜、そして皆が集まってきて竜胆に手を伸ばすも竜胆は何も言わずに自分の制服を見る。そこはお湯に濡れて乾いている部分は全く無く色は変わり重そう。綺麗にセットされていた髪はびしょ濡れで風呂上りの様。そして泥にまみれた自分。
「あははっはっ!もう、何コレ!!」
ついていないのか、ある意味ついているのか。もうどうしようもなくて笑うしかないじゃないか。伸びてきた手は竜胆を強引に立ち上がらせる。そう、私がどうしようもなく蹲っていると必ず手が伸びてくる。立たせてくれて引っ張ってくれる。それは私にとっての宝物。
「鏡夜。環。いつもありがとね」
それでもどうしようもない現実は二人の手を拒絶してしまう程の重さで竜胆に襲い来る。
終
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