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「藤岡!ちょっといいか!」
突然笠野田が第三音楽室へと入ってきた。その姿は何故か泥まみれ。園芸部の活動中だったのだろうか。
「こ…こういうのはホスト部に任せるのがいいかと思って…園芸部で新しい花壇作る事になって裏庭掘ってたらよ…土からこんなモンが…」
そう言い笠野田はボロボロの本を見せる。
「宝の地図!?」
昔話にでは良くある宝物を授かる、という話をしていたからこそ皆は驚いた。そして皆の視線はハルヒに集まる。これは勿論参加するだろう?ハルヒは?という視線。
「え…あ…そっか。何の信憑性もなくこれも経験なのかは若干疑問ですが早速解読してもましょう…!」
ハルヒはいつもならやらないとか面倒とか言う所をアクティブハルヒは積極的に参加すると言ったのだ。
「面倒ねぇ」
「竜胆がものぐさキャラ設定か」
「え、姫ってこういうものでしょう?それにかぐや姫なんか月の姫なんて綺麗な印象だけれど、結局はわがまま言って散々振り回した挙句に月に帰って行った話よ」
「帝は悲しんだだろうが。本物の恋だったのだろう?」
まさか鏡夜からそんな言葉が出るとは意外だった。竜胆は少し目を丸くして驚いた。
「そうだとしても、そんな帝にかぐや姫が渡したのは手紙と不老不死の薬よ?どうしろって言うのよ。不老不死になっていつまでも帰ってくるのを待ってろって?そんなの酷よ。人間の心はそこまで強くない」
「…いや、不老不死になってなんとかして月まで追いかけて来い、かもな」
「解釈の違いね」
「…まぁ、間違いなく俺なら何年かかっても追いかけるがな。それで頭の一つでも叩かなきゃ気がおさまらない」
竜胆はそれを聞いてぷっと吹き出した。それに対して鏡夜は眉間に皺を寄せるが。
「…何故笑う」
「い、いえっ!鏡夜に思われる子は本当に幸せねっ!ま、逃げ道が無いって言ったらそうなのだけれどっ…鏡夜っていつまでも根に持ってそうだものっ!」
「…それは褒めているのか?」
「意外に一途だと言ってるのよっ!」
どうして鏡夜は私の想像にまで入りこんでくるのかしらね。そこまでやられて何か感じないはずがないじゃない。あぁ、本当に彼が好きだわ。いっそ嫌いになれたら楽でしょうに。それすらもさせてくれない鏡夜は卑怯。そして牡丹を理由に気持ちを伝えない私はもっと卑怯。
終
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