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「…そうね。私は今牡丹だから言えないわ。言えるとすれば牡丹を卒業する時かな」

「…それって辛くない?」

「光は辛いの?今の状況が」

「え!?な、何でわかんの!?」

誰もが気付いてますが。温かい目で見ていたと言うのに気付いていなかった方がビックリだよ。

「どうして分かるかは置いておいて…告白する時を考えたって結局は無理だと私は思う。きっとどうしても伝えたくなる時が来るんじゃないかしら。一歩先に進みたいって感情が抑えきれなくなる時」

「…僕にも来るかな」

「来るかもしれないわ。それが来たら伝えれば良いのよ。それまではハルヒちゃんにしっかりアピールしなさい!」

「ちょっと名前出さないでヨ!」

パチンと音がしそうな勢いで口を塞がれてちょっと涙が出そうになった。でも、それは痛さの涙じゃない。大人になったね。光、環やハルヒちゃん、ホスト部の皆と出会えて良かったね。

「…竜胆ねぇにはすっごい感謝してんのは本当。竜胆ねぇがホスト部に入る条件って“僕らをホスト部に勧誘する”だったんだってね」

「あら、環に聞いたの?」

「うん。僕はホスト部に入れて本当に良かったからさ竜胆ねぇにもお礼言いたいし…でもさ、どうして僕らを条件にしたの?その頃には殿と仲良かったんでしょ?」

「…10年近くぶりに再会した光と馨が寂しそうだったから、かなぁ。私ね、桜蘭に来てから二人の様子を見に行ったの。そうしたら二人だけで世界作ってた。まぁ、私もその時余裕なんかなくて声をかけられなかったんだけど」

私も一人の世界を作り上げようとしていた。自分を偽って。

「鏡夜も一人の世界を作っててね、それを環が壊したの。そうこうしてる内に私も二人に世界壊されて、見事に繋がってしまった。だから、環に賭けてみたかった。光と馨の世界も壊して繋げてくれるんじゃないかって」

それは見事大成功。二人だけの世界はなくなり、自分の世界を持ち、それが誰かと繋がっていることに気付く。

「良かったね、光」

私が光の頭を撫でようとした時にその手は払われ、私はそれがショックで呆然としてしまったのだけれど、次の瞬間光の手が私の頭に乗って優しく撫でていた。

「ひか――…」

「竜胆ねぇこそ良かったじゃん。竜胆ねぇに何があったのか僕は知らないけどさ、竜胆ねぇこそ今楽しそうじゃん。ホスト部に入れて良かったじゃん」

いつの間にかこんなに背も伸びていて、こんなに優しくなって、色んな事を学んで、大人になっていくのね。私は涙を堪えるように下を向いた。

「竜胆ねぇが昔言ってた事、ようやく理解出来たよ。僕と馨は双子だけれど別々の人間だって――…ありがとね、竜胆ねぇ」

その時には声が出なくて私は頷くだけ。

「でも、これからもよろしくネ、多分迷惑はいっぱいかけるからサ☆」

えぇ、こちらこそ。




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