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「竜胆ねぇ。僕さ、気になってたんだけど…竜胆ねぇ好きな人いるよね?」

「光は随分と前からそればかり言うよね」

「しかも相手は鏡夜先輩、違う?」


常陸院光の観察日記@


光の言葉を聞いて私は数分は固まっていただろう。光はその間時折気まずそうに目を逸らしたり、顔を赤らめていたが、その場から居なくなる気配は全く無かった。ちゃんと話を聞くまでは動かないらしい。光の言葉を何度か反芻してようやく我に返った私は繕った笑顔を浮かべてしまった。

「どうしてそう思うの?」

そう言うと光はむかついた様に眉間に皺を寄せ私の頬を抓った。すぐ頬を抓るのは柚葉ちゃんと同じではないか。

「…痛いのだけれど…」

「竜胆ねぇがつまんない嘘つくからだヨ」

嘘をついた覚えはないのだけれど、光にはストレートに物を言わなきゃダメらしい。光が抓る手をどかして今度は笑顔無く私は光を見た。

「違うわ。どうして光が気付いたのかなと思っただけよ」

「え、じゃあ、やっぱり…!」

「うん。私はね、ずっと鏡夜が好きなの。内緒ね」

わぁ!やっぱり!そうだったんだ!当てられた事が嬉しいのか、片思い同盟が出来るのが嬉しいのか光は少しばかり嬉しそうに辺りをキョロキョロと見回す。

「ちゃんと言ったのだから、光がどうしてそう思ったのか教えてくれない?」

「あ、うん。…正直に言うとさ、俺竜胆ねぇに好きな人が出来るの、多分嫌だった」

“俺”それは光にだけ出て来た癖。そして少し素直になった光に口角が上がるのを堪えきれない。

「もちろん今はさ竜胆ねぇには感謝してるから応援したいって気持ちで…だから、竜胆ねぇの事気にしてた。それで体育祭の時に確信したんだよネ」

「体育祭?」

その時何かあっただろうか?自分が感情を外に出してしまう様な事。

「…殿と鏡夜先輩のリレーの時。竜胆ねぇ小さく鏡夜先輩の名前呼んだから確信した」

「そう…」

自分でも無意識だった様だ。正直覚えていない言動。普通であれば環と鏡夜の二人を応援しただろうに私の中は勝手に優先度をつけていたらしい。

「で、でさ!僕が言いたいのはそれから!…竜胆ねぇは…鏡夜先輩に言わないの?」

「告白するって事?」

“告白”の単語に光は顔をボッと赤くした。どれだけピュアなんだろう。それは面白い所だ。でもからかっちゃいけない。


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