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「充分ですわ〜☆鏡夜君とお話してるだけでも教養が深まる気がしますもの…☆☆」

お疲れ様とでも言っておこうか。相変わらず営業中は無駄に爽やか。

「…俺は正直画家達の気持ちとか分からないけどさ、色や形、並びを見て美しいと思える。そしてそれを共感出来るのが何よりもいいと思うな。俺はホスト部が、来る皆が同じ思いでいられる場だったら嬉しい」

「牡丹君…!当然ですわ…!」

鏡夜に便乗してあげた事を感謝して欲しい。あの疲れきった顔。しっかりと営業しているとクラスメイトが竜胆達を呼びに来た。森の方を少し散策してみないかと。

「せっかくだけど僕はこの辺りで休憩しているよ」

「俺もパス」

「まあそれでしたら私達も…」

「いえ、是非森の空気を味わってきて下さい。実を言うとこの澄んだ空気の中で一人読書に耽るのが夢だったんです」

今更知的オーラ出したぁ!竜胆は心の中で笑っていた。それを邪魔しちゃいけないと思う女の子達を騙すのはかわいそうだが。

「牡丹君は?」

「実はこの辺に知り合いがいるんだ。会う約束してる。クラス行動中だし本当はダメだけど、今日だけだから内緒にして?」

指を一本立てれば女の子達は手を振って森の方へと歩いて行った。それに笑顔で手を振り替えしてから鏡夜は椅子に深く座り込んだ。

「…疲れる」

「同感。何が楽しくて定番の観光地にクラス全員で?全員一度は来てるだろうから新鮮味もないだろうに…」

竜胆も鏡夜の隣の椅子に深く座りこんで頭を抱えた。

「橘。明日のルートは決まったか?」

その声に答える様に鳳家の使用人が次々と現れる。一体どこに居たんだかそれは不思議なものだった。

「列車を利用して温泉保養地のヴィッシー・ドーヴィル辺りなら」

「そうだな…旅行の日程的にもその辺が限度だろう」

迫ってくる帰国日。それでも未だに収穫が一つも無いのが痛くて仕方ない。

「しかし、環の生家はパリ郊外と聞いている。もし母親がパリから遠く離れる事を望まないタイプならこの2箇所は充分候補地となるだろう」

「…私も環の母親はそのタイプだと思うわ」

出来るのなら環との思い出の場所から少しでも離れたくないと思うのではないだろうか。


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