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「ねぇ、このままこっそり抜けて甘い物でも食べに――」

「行くか、バカ」

「バカって何さ!?」

団体行動を乱すなってどこの真面目だよ!あぁ、そうね!鏡夜は真面目だもんね!委員長だもんね!だって眼鏡だもん――…竜胆がそこまで言えば鏡夜の右手は竜胆の頬を挟む様に掴んだ。口元はまるでピヨちゃんの様に尖った唇から言葉を発する事は出来なかった。その手が放されたと同時に竜胆は口を開いた。

「…鏡夜だってイライラしてるじゃん。昨日は何時まで調べ物をしてたの?自分にも半分分けなさいよ」

「…俺が勝手にしてる事だ」

「なら自分だって勝手にする。環の事を心配しているのは鏡夜だけじゃない」

そう睨み上げれば鏡夜は視線を逸らした。

「はいはい。分かりましたよ。ご自由にどうぞ」

随分と雑な言い方ねぇ。竜胆は眉間に皺を寄せた。見学の為に豪華車移動中竜胆は資料に目を通していた。それと同じ様な隣にいる鏡夜。その鏡夜の肩に頭を預けた。

「…あんまり寝てないだろ。移動中くらい寝たらどうだ」

「…鏡夜が寝てないのに寝れるわけないじゃない」

「…日頃から充分な睡眠を取ってるお前と俺を一緒にするな」

だから俺は寝なくて大丈夫だって?なんとも不器用な優しさ。それは私にだけなの?でもね、ハルヒちゃんの前に居る鏡夜は少し違うのよ?それは貴方がハルヒちゃんの事が好きだから?なのに私はいつも勘違いしそうになる。期待したくなる。気持ちを伝えたくなってしまう。この受け入れられるはずのない気持ちを。

「…ねぇ、鏡夜。私、鏡夜と一緒に居るとたまに分からなくなってしまう」

「………」

「…鏡夜の行動の意味とか言動を深く考えてしまって、終わりが見えなくて、私、悩むの」

「……なら、精々目一杯悩む事だな」

貴方のせいよ。貴方がバカみたいに優しすぎるせいよ。




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