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「どうせ恩返しなら埋蔵金か温泉のひとつでも掘り当ててくれればいいものを」

鏡夜は携帯をいじりながらシレッと言う。守銭奴の発言。

「でも、このままだと本当に困るわよ?他の生徒からの苦情も増えてるしね」

「ここまで来たら業者に頼んで排除させるしかないだろうな」

「そんな乱暴な!タヌキさんはモリ先輩に恩返ししたいだけなんだぞ!?現代のおとぎ話だぞ!?」

「じゃあお前がなんとかしろ」

業者に頼まずになんとか出来ているのならしている。困るのは相手が言葉の通じない動物だという事だ。素人に捕まえられるとは思えない。このままでは恩返しという名の嫌がらせになってしまう。とても微笑ましいとは見えない。

「…俺が…直接話をつける」

「「話ってどうやってタヌキと…」」

崇が持ってきた箱。その箱の中から出てきたのはいつぞやのひよこ。

「あーピヨちゃん連れてきたの〜?」

「へぇ。大分大きくなりましたね」

久しぶりに見るピヨちゃんは少し大きくなっていたが、崇への懐きぶりは変わっていなかった。そしてピヨちゃんは目を動かすとそれを竜胆に向けた。

「まさか…!?」

竜胆の予想通りピヨちゃんは竜胆の頭の上に移動した。そして巣の如く軽く整え定位置へつく。竜胆はそれに対して項垂れた。

「動物同士ならきっと分かり合えると―…」

「なーんだ他力本願じゃん」

「ピヨちゃんとタヌキが分かりあっても解決にならなくない?」

「崇って案外ロンチストさんだよね〜」

それを聞いた崇が竜胆と同じ様に大きく項垂れたのは言うまでもない。

「…いいや!モリ先輩の仰る通りだ!我々でタヌキさんを説得するぞ!」

また始まる、環のお節介が。皆を巻き込んで。

「「あのねー殿。動物相手に説得ってどうやって…」」

「動物同士なら分かり合えるなら動物と人間もわかり合えるはずだ!そもそもよく考えてみろ!野生のタヌキが何故桜蘭の敷地で行き倒れていたのか。何故モリ先輩にもらったおにぎり一つでここまで恩をつくすのか。――…タヌキさんはきっと孤独だったのだ。きっと家族からはぐれて見知らぬ土地に迷い込んで――…だからモリ先輩の優しさが嬉しかったんだ。だからこれか単なる捕獲作戦ではない!我々の手でタヌキさんを保護し、故郷の山に帰してあげようプロジェクトなのだー!」

環が言った時皆思った。タヌキと環を重ねた。環も強がってはいたけど、寂しいんだろうな、と。そうして皆は手を高くあげて新しいプロジェクトへ参加するのだ。

「ねぇ、鏡夜。私の壊れた化粧品さ経費で落ちる?」

「落ちるか、バカ。自分で買え」

「あのねぇ!お金払って買えるのであればとっくに買ってるわ!限定品とか非売品があったのよ…!それに一般のお店で買った可愛いオードトワレの瓶。名前忘れちゃったわ。星の形で空みたいな綺麗な水色でさ――…で、中身ぶちまけられて臭いに酔うから早く業者呼んで」

「臭いがきついのは勘弁してくれ」

そう言いながら鏡夜は清掃業者に連絡を取った。竜胆は空色の瓶の欠片を拾い集めハンカチの上に乗せていた。

「ねぇ、見て鏡夜。私、今空の欠片を持ってる」

「…バカか?ロマンチストか?ポエマーか?」

「バカね。全部よ」




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