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「…牡丹がさ、役者になりたいって私に言ってきた時嬉しい反面ショックだったの。牡丹は端から双子として共存して行く、なんて選択肢はなかったから。置いてきぼりくらっちゃって。牡丹は私に無いものいっぱい持っていて、あの時は色んな感情で押し潰されそうになっていたわ」
ショックな自分、嬉しい自分、恥ずかしい自分、悲しい自分。そんな自分だらけで埋めつくされて気付く。それが自分だった事に。
「でも、それが自分だって気付きなさい。受け入れるのよ。…私に光の気持ちは分からないわ。だけどね、これだけは言えるわ」
私は馨の前に移動して膝に顔を埋めていた彼の顔を上げさせた。
「馨と光は双子なの。特別だけれど特別じゃない。個性だけれど個性じゃない。言っている事は矛盾しているけれど双子なのよ」
馨は私に飛びついてきた。その反動で尻餅をついてしまったがこの際良しとしよう。
「今居るのが私でごめんなさい。でもね、私はいつまでも馨の姉でありたい。貴方が泣くのなら抱きしめてあげたい。馨の悲しそうな顔を見たくない」
また立ち止まったなら背中を押してあげる。顔を伏せるなら上げてあげる。
「…竜胆ねぇ、ありがと。元気出た」
「そう、良かったわ。その顔見れて私はホッとした」
「あのさ――…僕、最近光が何を考えているのか分からないんだ。しかもさっきヒミ――」
「あ!さっきの事は私と馨のヒミツにしてくれない?誰にも言ってないのよ。今は平気だし、無駄な心配かけたくないから。で、ごめんね。光がさっき?」
「…あはは!いいや、うん。ヒミツね。僕と竜胆ねぇのヒミツにしよう!」
馨は少し困った様に笑っていた。それでもさっきの繕った笑顔にしてみれば全然良い。何で笑ってるのよ?そう言いながら馨の髪をぐしゃぐしゃにしてあげたわ。
終
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