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「は、チェリーのクッキー美味しい……でも、ハニー先輩食べすぎですよ〜皆の分残しておかないと……って、モリ先輩。そのひよこは何ですか?」

今まで気付かなかったのだが、崇の頭の上にはひよこが乗っていたのだ。

「…祭りで買った」

「へぇ、お祭りでひよこが買えるんですか。知らなかった。触っても良いですか?」

崇が頷いて竜胆が手を伸ばすと竜胆の手にひよこは乗った。きちんと手のひらに収まっているひよこを見て竜胆は目を輝かせた。なんて可愛いんだ…!動物に飢えているわけではない。環の家のアントワネットは豪快な挨拶をくれる。こんなにもおとなしい動物を触れるとは思ってもみなかったが。そう思っていれば竜胆の頭にひよこは移った。

「わ!」

住処を見つけた様にひよこは足で髪をいじるとそのまま定ポジションを見つけてしまったかのような落ち着きぶりだった。

「……自分って動物に好かれるタイプなんですかね」

「そうだろうな」

「ですよね」

ここまで来たらそう頷かざるを得なかった。一向に動こうとしないひよこはそのままに竜胆は紅茶を飲んだ。そして戻ってきたのはハルヒと馨だった。

「あれ光達は?」

「光とメイちゃんは柚葉さんが仕事に出るというのでお見送りだ。環はおそらくまだハルヒを探しているな。そっちは俺が見てくるから二人共、お茶でも頂いたらどうだ」

環のバイト代がわりのクッキーもあるし。と言い残し鏡夜は部屋から出て行った。そして見つめるのは目の前に一つしかないクッキーだ。

「美鈴っちのクッキー!チェリーのやつあるかな?僕アレ好きなん…」

馨も目をやってようやく気付く。そこには一つしか残っていないクッキーに。

「ハニー先輩、竜胆ねぇ…」

「あのねえ〜崇のピヨちゃんがどうしても食べたいって言うからねえ〜〜」

当然言っていない。

「私は一個しか食べてないよ?でも、ちゃんと残しておけば良かったね、ごめんね、馨」

「…仕方ないか。これは光にあげよっと」

「え?何で?馨それ好きだって…」

「え?好きだけどでも、光もコレ好きだし」

それを聞いてハルヒは少し考えた後口を開いた。

「なんだか…答え出てるみたいだね」

「へ?」

「この間1個しかない物を好きになっちゃったらって言ってたでしょ?馨は優しいからそうやって自分が我慢して光に譲っちゃうんじゃない?でも光はそういうの喜ばないと思うけどな」

それを聞いていたのはハルヒだけではない。その場に居た竜胆も光邦も崇も聞いていた。ハルヒには分からないのかもしれない。だけれど、この三人にはよく分かってしまった。


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