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「いいね!完璧!」
竜胆は浴衣を着付けた彼等を見て微笑んだ。
「部活でも浴衣着たい所だけれど、線が出てしまうから残念だわ」
浴衣の中に色々と着込むわけにはいかないし。竜胆は寂しそうに呟いた後一人車の中へ戻った。流石に自分の着付けを出来る程上手ではないし、今は化粧をしなくちゃ。
「お嬢様。浴衣の方は…」
「これで」
それは事前にメイから受け取っていた浴衣だった。人に手作りの物を貰うのは初めてかもしれない。メイちゃんが自分の為だけに作ってくれた浴衣。それだけで嬉しくて笑みが零れてしまう。そして着付けと化粧を終えた後皆をようやく探しあてた。
「褐色の肌に花柄の浴衣が映えてまるで南国のプリンセスだ…今宵僕を貴方のお供に選んで下さいますか?プリンセス」
「…環も相変わらずねぇ」
「「竜胆ねぇ!」」
「わぁ、りんちゃん浴衣可愛いねぇ」
「ありがとうございます。皆探せて良かったわ」
携帯を持っていなかった竜胆は皆を探すのに少しばかり時間を要したのだ。あまり使わないからと思っていたがこういう時は不便だ。今日こそ忘れない様に携帯を注文しないと。メイとハルヒも浴衣でそれはメイの手作りの物。そして帯は竜胆がプレゼントした物だった。
「…鏡夜先輩。美鈴さんは?」
「作戦開始はもう少し様子を見てからの方がいいからな。神社の裏門で待機してもらってるよ。こちらの合図で作戦開始だ。祭りの主催側にも話をつけてあるから多少の騒ぎが起きても心配ない」
あちらこちらに居るのは鳳家のスタッフ達。
「ハルちゃん、りんちゃんわたあめ食べよ――☆☆」
「「ハニー先輩、まずヤキソバだってばー」」
結局の所皆が少なからず庶民の祭りを楽しみにしていたのは言うまでもない。
「「ハルヒ!竜胆ねぇ!あっちで何か太鼓叩いてるー!行ってみよー!」」
「行こう行こう!あれ、鏡夜。お面欲しいの?ならはんにゃにしなよ」
「…何故」
「鏡夜にピッタリかと――……」
だから、その顔がはんにゃの様だといい加減に気付いて欲しい。無表情でも怒りが伝わってくる様な気がするんだってば。
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