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「ハルヒちゃん。そう言えばこれお父様に。色々サンプル持ってきたから、どれが一番良かったか教えて欲しいの」
「あぁーはい、分かりまし――…メイちゃん、痛いんだけど」
メイはミシンの手を止めてハルヒの腕を掴んでいた。
「…そ、そのショップ袋ってさ…そ、その袋だけでも――…」
「メイちゃん、その袋が欲しいの?」
「…あれ、じゃん?海外に店舗構えててさ…世界中のセレブ御用達の化粧品とか扱ってる…」
「確かに海外にいっぱいあるわよ。日本支店の方が少ないのよね。セレブ御用達って言われてるけれど、値段はピンからきりまであるわよ?」
「知ってるよ!問題はなんで竜胆君がそのサンプルを持ってるかって事じゃん!何、セレブ御用達だから知り合いだって?知り合いだから好きに取り寄せ出来ますよ、みたいな!?」
突然大きな声を出すメイに竜胆とハルヒは呆然としていた。
「そ、そんなに凄いんだ…?」
「すごいってもんじゃない!海外セレブ御用達!それだけで充分手が届かないでしょーが!発色が綺麗で〜王道な色だけじゃなくて奇抜な色もあるから舞台とかショーとかにも使われるしさ〜しかもその会社化粧品だけじゃなくてケア用品もやばいし、美容整形とか教室とか、メイクアップアーティストを育てる学校あったりするんだって…」
「あら〜メイちゃん、よく知ってるわね。流石女の子!」
「ショップ袋だけでも自慢出来るんですけどー」
「え…袋はただなのに?」
ただの物なのに自慢出来る…。庶民文化ってよく分からない。欲しいのならいくらでもあげると言うのに。収集したいものなのかしら?環も食べていた駄菓子の袋を集めていたけれど、一般の方々は皆スクラップ帳を持っているという事…!?
「ハルヒ。その袋だけでいいから頂戴」
「いいけど…」
「持ってきてあげるわよ。どれくらい欲しいの?」
サイズもいっぱいあるけど。その色だけで良いのかしら?それとも期間限定のも?
「いっぱいあんの?つーか竜胆君も御用達なんだ?肌キレーだもんね」
「ねぇメイちゃん。さっきから御用達とか言ってるけどさ、その袋の会社竜胆先輩の家だよ」
ハルヒの言葉にメイは動きを止めた。
「……は?」
その後興奮したメイに竜胆は押し倒されて、サンプルで良かったら今度持って来ると言えば感動のあまり涙目になるメイを見て、ハルヒと竜胆は笑った。何で笑ってんだよ!そうメイがあまりにも真剣に言うものだから何かがおかしくなって今度は三人で笑ったんだ。そういうのはあまりにも久しぶりで、どんなに頑張っていてもやっぱり女なんだろうな。
終
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