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「あれ?今日は竜胆君だけ?」

“君”と呼ぶのはどうしてか訊けば、年齢的には一個上だけど先輩とは違うし、かといって年上を呼び捨てには出来ない。そう言ったメイに竜胆は大きく感動した。彼女、ギャルみたいだけれど、しっかりしてるじゃないの。そういう感動だ。今まで偏見があってごめん。


メイとハルヒと竜胆


「ねぇ、女三人で遊びましょうよ〜ハルヒちゃんも外出禁止!」

「でも平日の午前中は浴衣作るのに忙しいんだけど」

「あら。メイちゃん。浴衣も作れるの?すごいわねぇ。見ても良いかしら?」

「いいけど…つまんないと思うよ」

そんな事ないわと竜胆は笑顔を浮かべた。

「で、竜胆先輩はどうして来たんですか?」

「いっつも男ばっかと居るでしょう?たまには女同士ってのもいいじゃない?それに外連れ回されると私いい加減倒れるわ。かと言って置いてけぼりは寂しいし…」

竜胆はそう呟きながらハルヒが淹れた麦茶を飲み、片手は持参したお茶菓子を取り、横目でメイが必死にミシンに向き合うのを見ていた。

「…竜胆先輩は本当に体弱いんですね」

「そうねぇ。昔大きな病気してから気をつけてはいるんだけれど、夏はダメね」

「大きな病気?」

竜胆は視線をハルヒに向けてから自分の言ってしまった言葉に驚いた。人の話をちゃんと聞かないからこういう事になってしまうのね。竜胆は逃げる様にメイの隣に並んだ。

「おお!メイちゃんって本当に器用だねぇ〜浴衣はこうやって作るんだ」

急に話を逸らして…。しかもあからさまだ。言いたくない事情なのかもしれないけど…ハルヒは小さく溜め息を吐いた。

「…それこそ何百万の浴衣とか持ってんじゃないの…?」

「あら、メイちゃん。浴衣とか着物、ドレスって値段じゃないわよ。確かに良い所の家ならば最低限のランクがあるけれど…結局の所、それがいかに似合っているか、着こなしているかじゃない?値段じゃない。良い物は良いし、いくら値段が高くても良くない物はある」

竜胆の言葉を聞いてメイは目を輝かせた。

「…決めた」

「何を?」

「今からあんたの浴衣も作ってあげる!」

メイは竜胆を指さした。それに何も言わずに竜胆は微笑んだ。

「ありがとう。なら私は皆の分の帯をプレゼントしようかしら?」

携帯携帯…。あ、新しいの買うのを忘れてた。まぁ、それはいつでも良いか。家に帰ってからでも。そこまで携帯を必要としない自分として電話がどこかで借りられれば良い、竜胆にとってはその程度。


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