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ついに痺れを切らしたメイはカラオケに連れて行くから車から降りてくれと折れた。そして皆は初体験のカラオケへとやってきたのです。

「「うおー!せまっ!ありえない」」

「狭いからこそいっぱい部屋が作れる。ねぇ、部屋は隣合ってるけど、そんなに防音効果に徹しているの?」

それに対してメイが一々怒るのは言うまでもない。

「10番須王環。“私鉄沿線”歌います」

タンバリンとマラカスまで装備。格安のドリンクバーと言うのも初めて知った。無駄なまでのイルミネーションに環の歌の上手さにも驚いた。帰国子女か?と聞きたくなるくらいだ。

「鏡夜、見て見て。この罰ゲームメニューって何すると思う?」

「…罰ゲームがあった方が盛り上がるんじゃないか?」

「だってロシアンルーレットだよ?そもそもカラオケは歌いに来るだけではないのかしら?」

「さあな」

竜胆と鏡夜は覗き込んでいたメニュー表から目を離して環の歌を聴いているが、チョイスが古すぎてどうも着いていけない。

「ハルヒは歌わないのか?」

「そうだぞハルヒ!何事も経験だ!よーし、お父さんとデュエットを…」

「イヤです」

即答した後ハルヒは膝を抱える環を置いてお手洗いへと出て行った。

「ちょっと…ホラ。何歌いたいの?あたし一緒に歌ってやるからさ」

「ありがとう。優しいんだね、メイちゃん」

部員達が見慣れている環の涙にメイが心を打たれていた事等誰も知らなかった。

「ねーねーメイちゃんはカラオケの他に何が好きなの〜?」

「服作ったりとか…」

「すごいねぇ。器用さんか」

「「へー美鈴っちと一緒じゃん」」

「はぁ!?あんな奴と一緒なわけ…」

「「美鈴っちのどこがそんなにいやなのさー」」

「アンタらは知らないから…あいつの部屋とかさ…すっごいブリブリ趣味なんだよ…?」

それを聞いて想像してしまった事を後悔した。予想は出来たものの、なんとなく避けていた道。

「誕生日には毎年毎年ビラビラの服贈ってくるし、この間母親の手前とりあえずあいつん家行った時だって…“パパと一緒にお人形さん遊びする?”なんて言うし!確かに昔からかわいいモン好きではあったけどさアイツは!でも一応バリバリの銀行員だったんだよ!?それがなに?今じゃアレだよアレ!」

そりゃ帰りたくもなる。それに対してフォローする気力もない。流石の竜胆も苦笑いしか出来なかった。

「ま…まぁホラハルヒの家のパパさんだって…」

「あそこの父親はキレー系じゃん!それにあの子の父親は…娘を捨てたりしてないじゃん…」

「そっか…寂しい思いしたんだね」

そう言う環はどこまでも優しい顔だった。また始まるのだ。環のお節介はいつどこでも、誰の為であっても。

「あれスイッチ入ったね」

「だろうな…それよりも俺はお前に聞きたい事があるんだが?」

「何――…あ、待って。これ自分!はい、マイクプリーズ!日本の曲は知らないから洋楽ね!皆さん自分の美声に酔いしれて〜」

どうしてだろう。何か聞きたくなかった鏡夜の言葉。嫌な予感がしたの。




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