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「ハルヒ!テンション低いぞ」

「こういうのは慣れていないので。クリスマスなんて次の朝父が職場から持ち帰ったケーキ食べるくらいで…」

「じゃあハルちゃん、一人ぼっち?」

「クリスマスはいつも何してるの?」

「そうですね…去年は確か“加藤家の食卓クリスマスSP”を…」

それはテレビ番組らしい。竜胆は知らないが環は知っているようで庶民の為の庶民の知恵番組だと言う。そもそもこの場でそれを見ているのはハルヒくらいだろう。それくらい生活水準が違い過ぎるのだ。

「「僕らにゃ無縁だけどねー」」

「ああ、そういう反応だろうと思ってました」

「何故だ…!なぜおまえはそう物事に淡白なんだ…!おまえの愛する加藤家の皆さんが馬鹿にされたんだぞ!?」

「何故そこまで愛せましょう」

環とハルヒの熱さとテンションに大きな差があるが目に見えた。

「「豪華パーティーもハルヒにとっちゃ豚に真珠なワケね」」

「パーティーなんて重く捉えずにこの空気を楽しめば良いよ」

「せっかくだから料理くらいは食べておいたらどうだ?ごちそうだぞ」

「ごちそう……大トロとか…?」

それを聞いて一同は驚いた。大トロがご馳走だと。そうなれば皆の動きは早い。

「誰か!大至急ここに大トロを!」

「つつましやかさん…」

「はにかみやさん…」

「ハルちゃんタッパーあるよ!」

「特上寿司10人前追加だ」

「むしろ解体ショーとかしちゃったらどう?」

すぐに寿司を持ってくる崇と皆の言葉にハルヒは珍しく大声をあげた。まぁ、これは皆がハルヒを可愛がっている証拠で、その輪から抜けるように竜胆は一人先に控え室に移動した。そこには準備されている衣装とメイク道具の数々。竜胆はそれに触れながら先程までの騒がしい空気を思い出していた。打って変わっての静けさに少し感傷さえ覚える。私はこっちで仲間達に囲まれて毎日楽しくて騒がしいけれど、君は大丈夫?もう一人の私。竜胆は窓側に移動しそこから空を見上げた。

「竜胆。どうした?」

「鏡夜。どうもしてないよ。ただ雪降らないかなと思って」

控え室に入ってきた鏡夜の方を向いて竜胆は微笑んだ。

「雪が降ると色々と面倒だな」

鏡夜は竜胆が先程まで見ていた窓から空を見上げた。この星が見える空では雪が降る事はないだろうと身を翻して窓に寄りかかる。

「…鏡夜、メリークリスマス。良いクリスマスを」

「随分と他人事だが?一緒に楽しむ、という選択肢は無いのか?」

「え?…ふふ、鏡夜がそういう事を言うとは思ってなかった。そうだね、楽しもう。二度とないかもしれないクリスマスを」

鏡夜は竜胆の頭をポンポンと軽く叩いた。

「お前のネガティブさは折り紙付きだな」

「失礼だよ、それ。ネガティブを通り越したポジティブなの。もう来ないかもしれないから本気で楽しもう。それってポジティブじゃない?」

「はは、ある意味そうかもな」

鏡夜は小さく笑った。その顔を見て竜胆は少し驚いた後同じように微笑んだ。




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