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そして伽名月は小さく呟いた。相手の気持ちなら考えるまでもないと。どうせ私の事なんか誰も理解してはくれない。誰も好きになってくれるはずがない。

「話すだけ無駄なら最初から呪いで――…」

伽名月の寂しげな言葉を光邦は優しく訂正した。

「違うよ。伽名月ちゃん。理解してもらいたいからお話するんだよ?好きになってもらいたいならたくさんお話しようよ。僕は呪いとかで気持ち変えられちゃうのはイヤだけど、伽名月ちゃんの好きな事とか苦手な事とか嬉しい事とかそういう話ならいっぱい聞いてみたいと思うよ?」

その言葉は伽名月を動かす事になる。

「伽名月ちゃん。僕はね、苦手でも努力する子が好きなんだよね」

光邦は今までに見た事の無いような笑顔を伽名月に向けた。いつもは可愛らしいイメージの光邦が一変し、それはとても男らしく見えた。

「ハニー先輩男らしい…」

「ハニー先輩カッコイー…俺と付き合いたければ俺好みになれ的宣言?」

「…あれは効く。あの笑顔はやばいわ」

そして伽名月はゆっくり、自分の言葉で言葉を紡ぐ。

「…好きな事は呪いで…苦手なのは人と関わる事で…でもあの日…渡り廊下で転んだ渡しに埴之塚さんが手を差し伸べて笑顔を向けて下さって――…とても嬉しかった…です」

「そっか〜。そんじゃ伽名月ちゃん。まずはケーキ食べる〜?」

「…はい!」

その日から伽名月は度々ホスト部に来るようになった。光邦と二人きりの会話を続けていく。

「埴之塚先輩。私も努力してるつもりなのですが…やはり呪いは趣味で研究し続けたいのです」

「まぁ僕もケーキやめろって言われても無理だしね〜趣味程度ならいいじゃないかねえ」

「そうですか、ではそうします」

それはとても微笑ましい光景だった。

「りんちゃ〜ん!チョコありがとね☆僕、りんちゃんの事大好き〜☆」

「ありがとうございます、自分もハニー先輩の事が大好きです――!」

光邦が選んだ答えはここにあった。




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