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「「竜胆ねぇ!」」
「はいはい」
「「占いしよ☆」」
「お、いいね。で、何の呪い?」
「「占いだヨ。うつんなヨ」」
そして伽名月のラブラブ(呪い)アタックは日々激化していったのでした。食堂で会えば割り箸に互いの名前を書いてそれを使う。クラスに現れたと思えば紙に99個書いた自分の名前の100個目を書いて欲しいとの事。相合傘は勿論のこと、リボンの片方を握れと言ってきたり、光邦は当然ストレスが溜まっているに違いない。ぼんやりとしながらケーキを食べていた。
「ハニー先輩。チョコレート食べましょう?お疲れのハニー先輩の為に取り寄せました!これ、好きですよね?」
「りんちゃん…ありがとう」
うーん、そういう目もどこかおぼろげだった。
「…りんちゃん、僕…どうすれば良いのかなぁ…」
「ハニー先輩の思う事をすればいいじゃないですか。言いたい事を言ってあげれば良いじゃないですか。伽名月ちゃんにはきっとハニー先輩の言葉が一番効くはずです。だって、好きな人の言葉はきっと一番響くでしょう?」
竜胆の素直過ぎる言葉に光邦はそっと目を閉じた。
「ハニー先輩どうしますか?部の営業に差支えかねませんし、よろしければこちらで手を回して…」
「うーん…でもねぇここ何日か見てて思ったんだけど――…伽名月ちゃんて黒魔術部以外にお友達いないみたいなんだよねぇ…多分人と関わるのがすごくヘタで、呪いとかおまじないとかが伽名月ちゃんにとって唯一のコミュニケーション手段になっちゃってるんだよ」
失礼します、と伽名月はやって来て光邦の手からうさちゃんを奪い取った。
「すいませんがそのぬいぐるみをお借りしたいのですが」
「ええ!?何するの?」
「相手の大切なものにまじないをかけて相手の魂を手に入れる呪いです。明日にはお返ししますので…」
「ダメダメ!僕のうさちゃ…」
それを崇が伽名月から取り上げたのだ。そして寡黙な彼は口を開く。
「…相手の心を手に入れたいならもっと他にすべき事があるんじゃないか?」
「…ぬいぐるみを渡してください。邪魔するあなたに不幸の呪いを――…」
「…相手の気持ちを考えられない人間に呪われても負ける気はしないし、そんな人間がいくらまじないなどかけようと誰の心も得られないと俺は思う」
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