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第三音楽室の扉を開こうとした時中から声が漏れてきた。それは光と馨のもので、昼間の事をまだ引き摺っているらしい。

「光、馨。部室で騒ぐな」

「「鏡夜先輩!だって殿とあの王女が…!」」

「…俺は写真でしか知らないけど似てると思うよ。環の母親にどことなくね」

まさか生き別れの殿の妹とか?光と馨の言葉に首を傾げた。いつからそういう話になっていたのだろうか。

「やわらかそうなブロンドとか…笑った時の目元の雰囲気なんかがね」

環を手離さなければならないと知ってから環の母親はずっとふさぎ込みっぱなしだったらしい。

「環が最後に見た母親は泣き顔だったそうだよ。…笑顔が見たいんじゃないか?環は、あの王女の」

環はミシェル王女に尽くしたいわけではなく、ただ一人の女の子として笑顔が見たかっただけだったのだ。それを聞いてしまえば光馨は顔を伏せた。

「「…そんなの言ってくれれば僕らだって…」」

「悪い!遅れた!」

環が遅れて第三音楽室へ入ってくると、光と馨は照れ隠しのように暴言を吐く。

「マザコン!マザコンキング!」

「な、なんだ急に失敬な!」

それは二人なりの励ましの言葉であって、決していじめているわけでない。光と馨が素直ではないのは今に始まった事じゃない。

「「んじゃ僕らはこれで」」

「え?おい帰るのか?」

「「明日からド派手に王女をおもてなしするんだから、帰って準備があんの!」」

「そんじゃ〜僕らも☆ね〜崇?」

「ああ…」

「じゃあな環」

「じゃあね〜」

環とハルヒを残して皆は第三音楽室を出て行った。そして考えるのは一人の王女とその王女に一つの願いを込める環のこと。ホスト部員達はいつもこうなのだ。誰かが困っていたら皆全力でそれを助ける。そこに躊躇はない。

「さて、盛大にやってやろーじゃん!」

「「おー!」」

だけれどそれはどういう方法をとろうかが問題なのである。

「んじゃ今日自分は常陸院家にお泊まりしよ。朝まで考えようっと」




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