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「大体王女なんか珍しくもないのに皆して盛り上がりすぎだってば」

「え…珍しくないんだ…?」

「少なくとも“お世話係”に命じられなきゃならない立場の人間はこのクラスにはいないと思うけどね」

「小国とは言え歴とした王族だ。取り入っておくにこした事はない」

「面白半分で来てみれば凄い事になってるし」

「「鏡夜先輩、竜胆ねぇ」」

「第一ほら」

鏡夜の言葉に皆王女へ視線を移した。そこには膝をついている人物。

「あなたには到底及びませんがせめて少しでも芳しさの色添えにと…」

環は王女へ大きな薔薇の花束を渡す。

「理事長の息子がまずあれだ」

鏡夜と違って取り入ろうとするはずはないが、その尽くしっぷりは部員達でも驚くレベルだった。確かに環はレディファーストが染み付いており、普段からそうなのだが。

「学校生活で不都合があればなんなりと、姫」

「そうね…私エアコンは肌に合いませんの。どなたか扇いで頂けません?この椅子も固くて痛いわ」

仰せのままにと環は傅いた。

「相賀君。管理室へ行って空調の件頼んでもらえるかな?」

「環。いいよ、俺が連絡するから」

環の言葉に竜胆は携帯を出して連絡するとすぐに1−Aのエアコンは抑えられた。

「それとそこの常陸院ブラザーズ!扇を持て!」

「「ハァ?」」

嫌だよ、なんとか言ってよ鏡夜先輩――の後には鏡夜も竜胆と同じ様に携帯を取り出し使用人を呼び出せばすぐにセットが完了した。

「御苦労様、柊さん、鳳さん」

「いいえ。王女のお役に立てて光栄です」

鏡夜と竜胆は頭を下げた。それに呆れるのは光馨、ハルヒだ。かくして王女への尽くしつぷりは話題になる程だった。それは行き過ぎたものだと誰もがひいている事だろうが、環はやめようとはしなかった。どこへ行くにも付き添うレディーファースト。挙句にはカリキュラムの変更を願い、スケジュールの調整や専用マッサージルームまで設ける。王女滞在中はモナール王国の料理と、食器は銀製品とまで注文をつける。

「…環。代わるよ。須王の名が形無しって言う人達もいるらしいし」

流石にそろそろ環の行動を理解出来ない人間が出てきてしまうだろう。ホスト部員が丁重におもてなししているのなら分かるが、あくまで環個人が動いている様に見える。鏡夜も竜胆も協力するがそれでは足りない。光馨は手伝いたくないという始末だった。

「…いいんだよ、竜胆。これは俺がやりたい事だから」

「…そう。環ってばやる事が極端。いい?何かあったらすぐに俺でも鏡夜にでも言う事」

「ありがとう、竜胆」

純粋な環の心はただ一人の王女様へ向かっていた。ただ一つの願いの為だけに、王女と誰かを重ねてしまう。でもね、それは悪い事じゃない。純粋なまでの欲求。優しさ。

「鏡夜」

「どうかしたか?」

「環は一人でやりたいそうだよ。自分達を何だと思っているんだか…頑固だから言っても聞かないだろうし、こうなったらこっちも勝手に何かやっちゃおうか」

「…具体的に?」

「…未定」

「決まってから言え。バカ」




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