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僕じゃない方が光で、光じゃない方が僕。僕らはそれぞれ別個の存在。これはとっても大事な事。だけど僕らは二人で一つ。僕らは二人で唯一の存在。これまたとっても大事な事実。いつだったか世話係の人が言った。

『それって矛盾してるわね。別々の人間である事を主張しながら“二人で一人”な事もわかってほしいなんて無茶な話よ。普通の人には理解できないんじゃない?』

なら理解なんていらない。“普通”なんかくだらない。それは僕らがまだ一歩を踏み出す前の話


常陸院馨の中学生日記@


家柄目当てのバカな奴らは消去。恩着せがましい勝手な理屈で理解者ぶる女子達も消去。外見しか見えてないアホな大人も全部脳内消去。それでもしつこく近付いてくる奇特な人間はたまにいる。それが我等が殿。須王環だった。自分が高等部に上がった時に部を立ち上げるからそれに入部しろ、との事だった。当然そんな事に興味なんかない。だから僕らはゲームをする事にした。“どっちが光くんでしょーか”ゲーム。それはいつも光を当てるゲームだった事に気付いた。それは置いておいて、殿はしつこく付き纏ってきた。本当にしつこくて、休み時間になればいつも来て、だから僕らは嫌気がさした。殿の事を調べつくして本妻の子じゃない事を言ってあげた。

「がっかりさせられんのはごめんだしね」

それを言ったのは僕だったか光だったか。僕らはもうがっかりしたくないのだ。仲良くしていた使用人には感謝していたけれど、結局いなくなったし。唯一僕らを見分ける牡丹にぃは同じ学校でもあまり絡んでこない。そして一番の理解者であり僕らの姉的な存在だった竜胆ねぇはある日何も言わずにいなくなった。あの日から竜胆ねぇには会っていないし、牡丹にぃに理由を訊こうしたが、牡丹にぃは何故か休学してて戻ってきた頃にはそれを訊く勇気すらなくなっていた。

「「牡丹にぃ」」

「…光、馨。何?」

顔はそっくりなのにまるで態度が違う牡丹にぃ。あの暖かさと明るさはまるで無い。


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