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「なるほど。やはりな…奴のラブラブ妄想はあまりにリアリティがないと常日頃から思ってはいたが…」

「タマちゃんは自分の事には疎い人だからねえ〜」

「馨。何?さっきの」

「イヤ…僕の仮説だったんだけどさ」

「取り越し苦労で良かった…はず」

落ち込む馨に竜胆はなんと声をかけたら良いか分からなかった。その後ろでハルヒと笠野田はこちらの様子を見て話していた。

「だ、大丈夫か、あそこ…俺、須王先輩になんかわりー事でも…」

「自分も未だによくつかめなくて。まあ…環先輩て少しうちのお父さんみたいなとこもあるし、ちょっとした時の対応とかわかる時もあるんだけど、基本的には全然…」

ハルヒの言葉に大きく反応したのは環だった。今お父さんみたいって言った?なんて驚きながら声を出す。

「ああ…まあ正確にはハルヒの父親と性格に若干類似点があるという意味だが」

「環が父親らしいとは言ってないわよ?」

それでも環は良かったらしい。環は顔を明るくさせて思うのだ。俺はお父さんではないが“お父さんみたい”と。

「…迷惑じゃなきゃ…あの俺また来ていいか…?」

「ありがとう。指名もらえるのはすごく助かるし。嬉しいよ。カサノバ君と仲良くなれて」

「俺――…っ…藤岡が」

「やっぱり価値観の合う“友達”っていいよね。こういう話できる人っていなかったから。いいよねそういう“友達”って」

ハルヒの無自覚は笠野田の告白をも振り払い、挙句の果てに友達宣言を二回。周りの女性達はふられてしまったわ、と小さな声を出すがそれは残念ながら笠野田にも届く。

「ずっとともだち…だっ!」

笠野田はハルヒの友達というポジションを手に入れた。それに賛同した人達が笠野田に近寄る。笠野田は初めて恐れも無く人に囲まれる事に戸惑う。少しかわいそうだが、これが友人を作る良いきっかけになった事は事実だ。ほぼ同情で作られているが。

「「僕らも友達だよ!ボサノバっち!」」

「僕は先輩だけどお友達だよ〜!」

「私達もお友達ですわ!」

その様子を見たまま環は動かない。先ほどまであんなに父親みたいと言われて喜んでいたのがまるで嘘の様に。

「環?どうした?」

「うむ。男としてボサノバ君の心情を考えるとちょっと…」

「おや、それはおかしいな。お前は“お父さん”なんだろう?ここは喜ぶべきところであって、彼に同調して胸を痛ませる理由などないのでは?」

「うむ!そうだったな!」

なんて単純な奴だと鏡夜は思う。それを近くで聞いていた竜胆は驚いた。今のはどういう意味だ?黙っておいた方が今後楽しそうになりそうだから?それとも――…。


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