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「いや…この人らの厚意に応えられねー俺がわりーんだ…ネコ耳も…天使の羽根も俺が似合わねーから……けど俺はどうしても人に慕われる人間になりてぇ…わかりました…メイド服着させていただきます…!」

笠野田はメイド服を着ると言い出したのだ。笠野田のあまりの真面目さに感服ものだった。

「う…うんじゃあコレ…」

――どうしよう。殺される…ちょっとした軽いノリだったのに…そんな思いも届かず、笠野田は猫耳にメイド服という格好になった。そしてタイミングの悪い事に一人の男が第三音楽室に入ってきた。

「すいやせん失礼しやす。笠野田の若がこちらに―…ヒッ!?わ…若!すすすすいやせん!密やかな御趣味の最中で…」

猫耳メイドに驚いたのはその彼。

「誰がこんな趣味か!つーか何しに来やがった!帰れ――――!」

「ぎゃ――――!」

見られて恥ずかしさのあまりかはんにゃの如く怒る笠野田。彼は涙を浮かべながら慌てて第三音楽室から出て行った。話を聞けば先ほど居た彼は舎弟の鉄也。一年程前に組に入りたいからと飛び込んできた。働き者で常に笠野田の近くに居る為に一番ビビらせてしまう相手らしい。彼が何をしに来たのか分からぬままだったが。

「鏡夜。よくない情報。最近校内に不穏な影あり」

「…は?」

「何でも桜蘭の制服は着ているものの誰も知っている人はおらず、こそこそと動く。どう見ても高校生に見えない二人組がいるそうよ」

そして翌日の事。崇が話題に上がっていた。崇は珍しく指先に怪我をしていたのだ。そして窓の外から飛んできたバケツに腐った卵まで飛んできたらしい。それが朝の出来事。しかも話を詳しく聞けば植木鉢や百科事典、ビデオデッキに屋根瓦まで飛んできたらしい。

「俺は全部の現場に居合わせてっけど、明らかに誰かの恨みをかってんだろーが!」

それを聞いた面々はポカーンとするだけだった。

「「あーナイナイ。モリ先輩に限って恨みをかうとか考えらんない」」

真剣に考えない部員に笠野田は拳を握った。自分は何度もそういう恨みをかっているのだから分かると。

「あのー…度々すんません。笠野田の若はおいでで――え?若…?」

舎弟の鉄也が入ってくると同時に笠野田は走って第三音楽室から出て行った。それに続く様にハルヒは追いかけて行った。それを見て竜胆は小さな溜め息を吐いた。

「状況は悪化して行く一方。そろそろ動いた方が身の為だと思うけど」

皆は頷いてから走り出した。そして笠野田とハルヒが一緒に居る所を見つけ、その瞬間ハルヒはペンキをかぶった。その所を押さえるのは簡単で崇は二人組みをおさえつけた。その間に光と馨が縄を巻きつければ犯人確保の瞬間だった。

「ハルヒちゃん大丈夫?とりあえず顔のペンキだけ拭こうか」

竜胆はハルヒの顔にハンカチをあてた。


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