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「…すんません。…よろしくお願いします…」

笠野田は申し訳無さそうに頭を下げたのだ。騙されていたとしても、本気で応援してくれる、という言葉を信じて。とても素直な子なのだ。逆に損してしまう性格なのだろう。だけど、そんな人にこそ人は集まる。彼が気付いていないだけでもう集まっているのかもしれない。

「あのーカサノバ…君?あんまりあの人達の言う事鵜呑みにしすぎない方が…」

ハルヒが笠野田に近寄り小さな声で言った。それは善意のチクリだが、ハルヒらしいと竜胆は小さく微笑んだ。

「イヤな事はイヤって言った方がいいよ?」

「あぁ…けど、銛之塚の兄貴の推薦した人達だし、今度は本気で考えてくれるっつってるしよ。迷惑かけてんのはこっちなんだ。信じる」

「笠野田君は優しいねぇ」

竜胆はハルヒの後ろから腕を伸ばし抱きつくようにしてから笠野田に声をかけた。

「あれ、そういやアンタって…」

その視線はハルヒに向いていた。

「1−Aの藤岡です。自分も高等部からの入学なんだ。仲間だね」

「あら、ハルヒちゃん。それを言うなら自分もだよ、ほぼ、ね。ほぼ」

ちゃんと言うのなら中学二年の冬。あ、それがあてはまるのなら環もか、なんて言いながら竜胆はハルヒの耳元で小さく笑った。

「あ…アンタら…缶蹴りとか…好きか?」

「さあ。どっちかというと興味ないかも」

「ねぇ、缶蹴りって何?」

缶を蹴って何をするの?そもそも遊びなのだろうか。竜胆は首を傾げるもハルヒは小さく笑って教えてあげますと言ってから笠野田に視線を向けた。

「でも、たまにはいいかもね。いつやろっか?」

「あ…えと…それじゃ…」

笠野田はハルヒの言葉に顔を赤くした。それに気付く鏡夜と邪魔をしに来る環に光馨。

「今日の放課後…」

「おー!ボサノバ君!こんなトコにいたのか――☆」

「次の作戦の準備準備☆」

「ハルヒはまざんなくていいからネ――☆」

環、光馨は笠野田を連れて行った。残されるのはハルヒと竜胆。

「あの〜思うんですけど、そんな事しなくてもカサノバ君て…」

「ハルちゃんハルちゃん、し〜〜だよ」

「え…でも、ハニー先輩…」

「うん…そうだね。早く気付くといいねえ〜」

鏡夜の視線は間違いなくこちらに向いていて、環光も、そして馨も動いた。そんな中で呆然としているのは竜胆だった。これからどうなるのだろう。彼らの気持ちと彼女の気持ち、そして自分の気持ち。そのまま窓際に寄って竜胆はそこから空を見上げた。もう間もなく空が変わるだろう。ただ夜を連れてくる様にゆっくりと青から群青か、残酷な程真っ赤なのか、それとも雨が降った様に滲むのか。

「…りんちゃん…?」

「はい?どうかしましたか、ハニー先輩」




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