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「ボサノバ君。俺の事は仮にキングと呼ぶといい」

それは非常にどうでもいい。環が立てる作戦を聞いているのだが、最初から雲行きが怪しいと思った。

「いいかね?君とモリ先輩の相違点は多々あれど、決定的に君に欠けているものがひとつある!」

それはラブリーアイテム!環の言うラブリーアイテムとは“みつくに君”エネルギー源はケーキ一日十個。オプションでハニー花が100個ついているというお徳パックだ。崇は一見目付きが悪く冷たい印象を受けるかもしれないが、この“みつくに君”を肩に乗せればまるで小動物に好かれる森のくまさんが出来上がる。更にラブリーアイテムは無口キャラまでフォローできる。何を語らずともみつくに君を配置する事で勝手に包容力を見出し、無愛想も寡黙な好青年に変えてしまうという優れもの。環の言葉を普段なら馬鹿にするホスト部員達にもこれには思わずなるほどと頷いてしまう程だ。

「とはいえ“みつくに君”はモリ先輩が長期契約されているからな。何か代わるものを考えるとして…次に問題にすべきはそのいかにもな不良ファッションだ。竜胆!常陸院ブラザーズ!」

久しぶりの仕事だ!竜胆は嬉々として笠野田に近寄るもそれを遮る光と馨。

「やっぱりこの場合はロン毛と言うのが――」

「そうだねぇ。顔立ちが鋭い分もう少し全体にキャッチーさが欲しいかな」

「せっかくボサノバなんて名前なんだし、熱いサンバのリズムを匂わすといいかもしれないネ☆」

そうこうしている間に竜胆は笠野田の近くから追い出されてしまう。ポツンとハサミとコームを持った竜胆は寂しそうに立ち尽くし、その場にしゃがみこみ膝を抱えた。

「竜胆、何お前は環の様な真似を…」

「…いいの。最近光と馨は反抗期みたいでお兄ちゃん寂しい」

そして散々遊ばれた笠野田が次の日第三音楽室に乗り込んできたのは言うまでもない。光馨に遊ばれた笠野田はサンバのリズムとしてドレッド風ねじりヘアに、キャッチャーさとしてサングラスとスカーフにうさぎの絆創膏。キャラクターものは環の目の据わったクマちゃんにラブリーアイテムは鷹凰子嗣郎。それが受け入れられるはずもなくただ恥ずかしさを感じただけだった。

「よし!皆の衆集合!では本日よりボサノバ君イメージアップ作戦を開始するぞ!初日だからといって皆緊張せずどんどんアイディアを出すように!」

「「イエッサー」」

しかも昨日の事はなかった事にしたのだ。当然怒る笠野田。

「昨日のをなかった事にすんじゃねェ!アンタらのせいで余計怖がられて…」

「「ハァ〜?なんの話?言いがかりとかやめてほしーよねーあの人被害妄想激しー」」

己の失敗を意地でも認めないタイプの二人にハルヒは呆れるだけだった。

「ボサノバ君誤解しないでほしい。俺達は本気で君を応援している…!昨日のはちょっとこいつらとシロの若い過ちなんだ…」

それもそれでひどいから。嗣郎なんてとばっちりじゃないか。竜胆は呆れる様に小さな溜め息を吐いた。が、笠野田は別だった。


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