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またもホスト部に訪れた珍客だったのです。お客様を見送った後制服に着替えた所で未だに居る彼に自然と皆の目は行っていた。
「1年D組笠野田律。関東圏のその筋で最大の力を持つ笠野田君の3代目の跡取り息子。桜蘭には高等部により入学。特徴は赤いロンゲと凶悪顔。無口で友人もなし。目が合えば相手に3ヶ月は悪夢を見させるクラスメイトには人間ブリザードと恐れられている」
鏡夜は持っていたファイルを淡々と読み上げた。
「あのう…それでそんな人間凶器の君が何故モリ先輩に弟子入りを…」
「笠野田の…」
彼はボソリと呟いたがいまいち聞こえない。フリをする光馨。
「え?カサノバ?」
「違う、笠野田の…」
「ボサノバ?」
「笠野田っつってんだろう、死にてえのか!」
ギッと睨みつけた。それにより皆笠野田から一瞬で離れていく。
「違う…そうじゃねーんだ、俺は…」
笠野田は孤独だったのだ。生まれつき目付きが極悪。それは組の4代目となるにはふさわしすぎる程のビジュアル。彼の父親はそんな彼に帝王教育を施し、見た目、言動共に立派に恐ろしく成長してしまったと言う。そしてある事ない事の伝説が生まれていったらしい。それは舎弟でさえもそうだった。本当は子猫が好きで、本を読んだり、文章を書くのが好きで、痛いのは苦手。根が照れ屋でうまく伝わってくれないらしい。その話に飽きた双子はもうそっぽを向いていた。
「じゃあ、まずその眉間の皺なんとかしないと」
竜胆は笠野田の額に指を一本当てて皺を伸ばすも、伸ばしてもすぐにまだ皺。それにはう〜んと竜胆は軽くうなった。
「…銛之塚先輩、教えてくれ。何でアンタはそんな風なのか…!そんなに目付きが悪くて無表情で無口で無愛想で、じゅうぶん地獄の番犬みたいなツラしてんのにどうしたらそんな風に周りに慕われる事ができんのか」
その言葉一つ一つが崇に突き刺さっていく。
「どうかその秘訣を俺に…!」
ショックで気が抜けた崇を他所に光と馨が勝手に弟子OKと許可した。それはただ単に面白そうだから。竜胆はまた始まってしまったと小さな溜め息を吐いた。
終
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