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「「夢?」」

「そう。兄の夢を叶えるのが俺の夢。どう思う?」

俺は言いきった。恐る恐る二人の顔を見るとポカーンとしていた。最初に口を開いたのは鳳鏡夜だった。

「…他人の夢が自分の夢だと?それはお前の夢じゃない。重ねられた兄がかわいそうだ」

「…知ってる。それでも夢だから」

それがごもっともな意見。知っている。だけど誰も言ってくれはしなかった言葉。

「…それを知っていてまでも貫き通す夢か。柊君はそこまで本気なのだな。格好良いよ。俺は嫌いじゃない。俺は協力してあげたい」

そう、私の本気なの。それに気付いてくれた言葉。それを聞いて私は涙が出そうになった。ようやく桜蘭に居場所を見つけた気がしたんだ。

「…私、君達の親友になりたいわ」

思わず出てしまった本音。

「それで?兄の夢と言うのは?」

「兄は役者になりたいんだって。でも兄は次兄。上の兄と後継者争いしなければならない。でも私は違うと思う。名家に生まれたからって何?自分の好きな事をして何が悪いの。人には平等にチャンスがあるはずなのよ。だっておかしいでしょう?実力があるのに年齢だけで決められるなんて。誰にだって自分で選び戦う権利がある。それを私は証明する。だからこそ、私は自分の足で桜蘭に来た」

結局の所兄の為、という綺麗事だけじゃない。

「……お前、名前は?」

「は?どうした鏡夜。彼は柊ぼた――」

「…柊竜胆」

「……なら俺はお前の夢を叶える手助けをするさ、竜胆」

あぁ、やっと聞いた。桜蘭で呼ばれる事の無い名前を。私の本当の名前を。ずっと呼んで欲しかった私の名前。

「……ありがとう、鏡夜」

私はどうしようもなく泣きそうになったが、なんとかこらえたんだ。そして泣きそうになったのはただ感動しただけではない事に気付いた。

「――…はぁ!?兄の為に男装をしている…女性だとぉぉぉ!?」

「そうよ。でもね、今更女扱いはやめて。気持ち悪いから」

これは後々自分達を縛る約束だとこの時は誰も気付いていなかった。

「それで高等部に上がったら部活に入らなきゃいけないし…女だとバレずに女装もしなきゃいけない…前途多難だわ」

そう思っていても少しわくわくするのは目の前に二人が居るからだろうか。心が軽くなった気分だった。




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