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「鳳君、ちょっといい?」

「何か?」

ここじゃちょっと、と入ったのはいつか俺が連れてきた空き教室だった。そこには誰もいない。大きな窓が並んでいる。

「…鳳君にこの前の事、謝ろうと思って…流石に言い過ぎたと…いくら自分が精神状態不安定だったとしても…」

「…そう言いながら避けていたのは君だろう?」

俺の言葉にうっと息を吐き出した柊牡丹は気まずそうに目を逸らしてからぶっきらぼうに呟いた。

「…謝るの、苦手。すいませんでした」

何とも素晴らしい程の棒読み具合だ。これで謝っていると言うのだから面白い。

「む、こんな所で二人仲良く何をやっているのだ?二人で親友の俺を放っておいて…!」

「…はぁ?」

「もしかして、自分も親友になってる?」

「鏡夜の親友ならば俺の親友で間違いないだろう?」

柊牡丹と親友になった覚えはないが?俺がそう思っていると柊牡丹は腹を抱えて笑い出した。ポカーンとするのは環。俺は何か悪いものでも食べたんじゃないか、そんな心配。

「もうっ…いや、須王君、君面白すぎる!そりゃ鳳君の鉄仮面も剥がれるわ、調子狂う!」

あはははっと高い声で笑う柊牡丹はまるで女。そう、今思えば柊牡丹の仮面が剥がれたのもこの時なのかもしれない。

「ねぇ、鳳君、須王君。君達二人に聞きたい事がある――」

その質問に答えると柊牡丹は笑顔で言うのだ。

「…私、君達と親友になりたいわ」

そういう彼女はとても男には見えなかった。後ろの空の背景が似合って、とても綺麗で――…。




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