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「竜胆ねぇ」

「ん?どうしたの、馨」

廊下で待っていたかの様な馨に竜胆は近付いた。そして馨の隣に並び壁に寄りかかった。

「…何か相談?」

「う、鋭い。…相談って言うか考え事なんだけどサ」

馨が相談だなんて珍しい。竜胆は少し驚きながらも馨の言葉を待った。

「…竜胆ねぇは殿の家族設定ってどう思う?」

それはここ数日馨が気になっていた事だった。先日ロベリアの事件で環はハルヒのキスを邪魔した。これで二回目だ。本人はかわいい娘の大事な唇を守る為だと言うけれど、実の父である蘭花の反応はいたって冷静。そう考えると環の“家族設定”には時々無理があるような気がする。

「そうだねぇ。環の作る家族設定は確かに最近度を越してる様な気がしなくもない」

「やっぱり!?」

「馨はどう思ったわけ?」

「…予防線かとも思った」

馨の言葉を聞いて竜胆はうーんと小さな声を出した。

「…環が何を考えているのかは分からない。家族に強く憧れているから単に出てきたのか、予防線なのか…壊したくない。家族は壊れないって意識してるのかもね。でもさ、予防線とか言われても実際そう制御出来る?」

「え?」

「環が予防線を張りました。家族なのだから恋愛禁止。近親相姦になりますーとか言われたってこっちとしては血が繋がってないからよくない?何言ってんの?ってならない?」

確かにその通りだ。予防線を張った所で人の感情がコントロール出来るはずもないし、もしかしたら誰かがその予防線を壊してでも近付きたいと思うかもしれない。それこそ家族は崩壊してしまうだろう。馨は竜胆の言葉に頷いた。

「…今居るホスト部メンバーってよく考えると家族って単語に無意識に敏感なのかもしれない」

「……どういう事?」

「環はお母様と会えないし、お祖母様には嫌われている。鏡夜だって家の都合とか、上の兄弟達と仲が良いとは言えないし、ハニー先輩だって次期当主とか靖睦君の事あるし、モリ先輩だって埴之塚家との関係もあると思うし、馨光はお互い依存激しいし、自分だって家族間に何も無いわけじゃない。ハルヒちゃんだってお母様を亡くしているでしょう?ね?」

ホスト部は“家族”というワードに縛られている…?

「でもさ、皆大勢で遊んだ事も無いだろうからそれが楽しいってだけかもしれないし。考えるだけいっぱい出てきちゃうね」

そう、この悩みは終わりがない。誰かが家族の輪から一歩踏み出す可能性もある。そしたらホスト部は壊れちゃうの?そう考えたくもない。いつかぶつかる問題なのかもしれない。

「ねぇ馨。この問題は今考える事かな?大丈夫、その時が来たらまた一緒に考えよう?一緒に悩んであげるから」

竜胆は馨の頭をポンポンッと二回軽く叩いてから微笑んだ。

「…光が、光が一歩踏み出したいと思ったらどうしよう…」

「馨が決めなさい。重要な選択を人に託すのは良くない。馨が応援したいなら応援すれば良いし、馨が負けたくないと思うなら遠慮しないで争いなさい。それこそ貴方達は双子なのだから、喧嘩したって元に戻れるよ」

目の前からいなくなった竜胆の言葉が響いた。僕が光と争う…?どうして?…ハルヒを巡って…?自分の中の気持ちを整理する必要があるようだ。そんな気持ちのまま馨は肝試しに参加する事になる。そして今目の前で見ているのは桜スポ。そこには“1−Aを襲った!黒魔術部あらわる!”と書いてある。窓に映ったベルゼネフに涙ながらに驚く1−Aの生徒達。

「「うーむ、してやられた。よく見りゃ明らかにベルゼネフじゃん…」」

「おまえら…俺に無断でハルヒをこんな危険な目に…!」

肝試しの話題はこれで終わり。とはいかない。

「竜胆ねぇ。この前相談した事サ」

「うん」

「まだ光は大丈夫かな。ハルヒを置いて僕の所に来るくらいだから」

「…そう。それは良かった、とは言えない気がするけどね」




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