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――幼かった僕らは彼女に見事にだまされた。だけど僕らは彼女に感謝しているんだ。とっても素敵な世渡り術を教えてくれたんだから

「えっ!?ええっ!?初めて人前で泣いた時の感動秘話じゃ…」

「「だから初めて人前で“嘘泣き”した時の感動秘話じゃん」」

途中でお客様に帰ってもらったのは大正解だったらしい。

「でもさー」

「昔っから竜胆ねぇには」

「「嘘泣きが通じなかった」」

二人の言葉に皆は揃って竜胆を見た。竜胆は双子の話を興味なさげに流す様にお茶を飲んでいたのだ。そして視線が向き、ん?と竜胆は首を傾げた。あ、さっきの使用人の話かな?

「あんまり良い印象は受けなかったわ、確か」

光と馨は喜んで居た様だが竜胆は正反対。詳しい事は知らないが二人はそれから手を焼くようになったのは言うまでもないからだ。それはその使用人のせいだろうと決め付けていたから。

「そう言うけどサ」

「竜胆ねぇだヨ」

「何が?」

「「僕らにイタズラ教えたの」」

その言葉に視線が再び竜胆に集中した。そして頭の中で考える。確かに大人を困らすのは好きだったかもしれない。大きな事はしていない、ちょっとした事だ。使用人達がちょっと困る様な事を仕掛けては…

「「僕らのせいにしてたよネ」」

あ、皆の視線が冷たい。竜胆は慌てて立ち上がった。弁解を始める。

「…ちょっと待って。それじゃあ語弊があるわ。確かに計画するのは私だったけれど、光と馨だって一緒に仕掛けてたわ!」

「「でもさ、バレる瞬間にいつもいなくなってた」」

皆の視線が更に冷たい。何故か遠ざかっていっている様な気もしなくもない。

「だ、だって、二人のツメが甘いんだもの!騙すのなら最後までやり通す!相手の懐に入って――」

「「それ彼女も言ってたんだよネ」」

失敗した…!竜胆はその場に項垂れた。なんと余計な事をしてくれた、と思っていた使用人の彼女と同じ事を言っていたなんて…!しっかりと話を聞いていなかったせいだ。竜胆が幼い頃聞いていたのは光と馨が初めて仲良くなった使用人が金庫から物を盗んで消えた、という事。光と馨から聞いていたのはその使用人のお姉さんは色んな事を教えてくれて感謝しているという事だけだった。

「光と馨の性格を作った大本は基を辿れば竜胆先輩が関わっている、という事ですかね」

ハルヒの言葉に竜胆は衝撃を受けた。まさかこんな事を言われるとは思ってもみなかった。え?もしかして私のせい?もしかしなくても私のせい?

「あはは、竜胆ねぇが珍しく困ってるー」

「ちょーレアー」

竜胆は頬を軽く膨らませてから目の前に光と馨を軽く睨んだ。その頬を左右から突付く光と馨。

「コラー!いい加減にしなさーい!」

そう怒り出す竜胆に光と馨は笑いながら逃げて行く。それを追いかけながら声を出す竜胆。

「戻ってきなさーい!じゃないと、君達の秘密を今から話します。いい?あの時の事よ。分かるよね?」

「「一体何!?」」

「はい、捕まえた。秘密?何だろうね、それは」

竜胆は不敵に笑った。そんな三人を残された部員達は見ていた。仲良さそうに笑う三人は微笑ましいもので、やっぱり特別な関係なのだと思った。




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