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「紅薔薇の会に入りたいというなら団体行動は乱さない!抜け駆けは厳禁!いかなる時でも紅薔薇様のファンとして恥ずかしくない行動を!」
蘭花の作戦とは紅薔薇を応援する為の紅薔薇会というファンクラブに入会するという事だったのだ。竜胆は小さく溜め息を吐いた後、ニヤリと微笑んだ。
「…ここは私の番の様ね」
そう言うと竜胆は着ていたTシャツを脱ぎ捨てた。そして出てくるのはロベリア女学院の制服。
「「おぉー!牡丹の君ー!」」
「任せて頂戴」
自信満々に微笑む竜胆に皆期待をしながら竜胆を見送った。
「ごめん、ちょっと用があってここに来たんだよね。あまり叱らないで――」
竜胆の自信は脆くも崩れ去る。
「なんて素敵なお方なの…!」
「お名前を教えて下さいませ…!」
平均女子よりも背の高い竜胆。そしてまるで男役の俳優かの様な立ち振る舞いと笑顔は女子達を魅了するのは容易かった。
「え、え、え…ぼ、牡丹…」
「まぁ!花の名前よ…!ロベリアにピッタリじゃないの!」
「ならば牡丹の君ね…!」
竜胆はいとも簡単に女の子達に囲まれてしまい動く事は出来ない。結局竜胆は何がしたかったんだ…。一同は呆然としていた。
「「はい、竜胆ねぇボーツ」」
「(た・す・け・て!)」
そんな視線は誰も受け取ってくれるはずもなく一人はぐれる事になったのは言うまでもない。しかも男達は自分に女の子達の目がある内にその場からいなくなっていた。そして今自分の周りには逃げ場はないぞと脅している様な気がしてならない目を輝かせた女の子達。左右前後塞がっている状態だった。桜蘭に居ても女の子に囲まれる事は多々あったが、ここまで強引ではない。初めての体験だったのだ。しかも、自分が女だと分かっていてもこの対応は。
「牡丹の君はいつロベリアへ?」
「今日はその為の見学なのでしょう?」
いつからそういう話になってしまったのだろうか。そもそもどこに連れて行かれるのだろうか、竜胆は冷や汗を浮かべた。竜胆が連れて行かれた場所は講堂だった。本格的な舞台設備。これからヅカ部の舞台稽古を見学するものだというものだった。そこに既にヅカ部が練習しており、ハルヒの姿を発見したが、あまりの近さで舞台用メイクが怖く感じ、何も言えなかった。後ろが騒がしいと振り向けば見知った彼等の姿。竜胆は隙を突き、拘束する手を払いのけ、座らせられていた椅子の上を飛び越えて皆のもとへ駆け寄った。
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