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「言っておきますけど、光邦みたいなハンパ者が次期当主なはずありませんから」

そう言う靖睦の言葉はとても冷たい。

「…本題に入るのが遅くなりましたが兄さん。高等部の空手部に頼まれて先週末大山校との合同合宿に参加されたそうですね」

「大山というと昨年度の全国制覇校だな」

「「あー僕らちらっと見に行ったよ、合同練習」」

皆様子を見に行ったのだが、それはとてもすごいもので光邦の圧勝、レベルだ。環が言うに大勢の猛者共をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、環の説明ではそれは空手ではない。

「環はまず空手のルールを学んだ方が良いよ、帰国子女」

「むぅ、竜胆だってそうだろうが!しかも、俺と同時期に来たはずだ!」

「違うよ、自分幼少期は日本、帰って来たのは環が来る一ヶ月くらい前だ!」

環と竜胆の言い争いを遮る様な靖睦の声が響いた。

「…どうしてそういう無責任な事するんですか!兄さんは一年以上も前に空手部を辞めているはずでしょう!」

靖睦にとってそれが何よりも気に食わなかったのだ。わざわざ高等部までやってくるくらい。

「兄さんは確かに強い。しかし埴之塚流の基本は私心を戒め、無我を目指す事にあったはず。自分を律する事をやめ、堕落した兄さんに埴之塚を名乗る資格はありません。ましてや遊び半分で空手部の助っ人などもっての外!金輪際埴之塚の名を汚すような行為はやめてください!」

靖睦の言葉に光邦は何も言わずに持っていたうさちゃんをぎゅと抱えていた。それに誰も声をかけられない。

「実の兄上に対し言いたい事はそれだけか!?」

声を発せたのは悟だけで悟は靖睦の頬を抓り上げた。

「そんな怒んなくたって」

抓られた靖睦は涙ぐむ。それをじっと見ている部員達に気付いたのか靖睦は慌てて涙を拭り、

「とにかく!伝えたからな!それといつも言っているけど学校では俺に近づくなよ!」

「なんだとコラ!靖睦!待ちやがれ!」

捨て台詞を吐いていなくなった。靖睦が走り去るとその後を悟が追いかけて行く。ハルヒが気を使って光邦に近付いた。

「ハニー先輩…あの…」

「大丈夫だよ〜元々僕が悪いんだもん。…でもこれで、チカちゃんにほんとに嫌われちゃったねえ…」

そう言う光邦はやはり寂しそうだった。そんな光邦に近寄って竜胆は優しく微笑んだ。

「ハニー先輩。余ったケーキ食べませんか?後今日友人からマカロン貰ったんですよ、一緒に食べましょう〜?」

「食べる――!」




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