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「あのう…すみません全くついていけてないんですが…チカって」
「顔見て分からなかったか?ハニー先輩の弟さんだよ。埴之塚靖睦くん」
「あ!よく見ればそっくり!」
そう光邦を襲ってきたのは光邦の弟である靖睦であった。身長こそ違うが眼鏡の下にあるその顔は光邦そっくり。そして近付いてくる足音は勢い殺さず持っていた竹刀で靖睦を軽く飛ばした。
「部活さぼってんじゃねえ――!」
「悟」
靖睦を飛ばした彼は崇に名前を呼ばれると顔を明るくさせた。
「お疲れ様です!今日は剣道部には行かれないんですか!?」
「…と、モリ先輩の弟さんだ」
ハルヒは目の前の状況をどう整理すれば良いのか分からなかった。ホスト部は休みにして第三音楽室に通せばニコニコとしている悟。
「あぁ!靖睦は光邦さんに用事か!てっきり部活サボりと思って慌ててしまいました!スマンな!悪かったなー靖睦!」
そう爽やかな悟と対称に無愛想なまま無言の靖睦。パッと見“大きいハニー先輩”と“小さいモリ先輩”なのだが雰囲気はまるで正反対。かく言う彼等も剣道部主将空手部兼部の悟。空手部主将柔道部兼部の靖睦。どちらも中等部3−Aの生徒だ。
「先輩方にも御迷惑おかけしました。あ、このお茶とケーキすっごく美味しいですね!」
「ははは。靖睦くんもどうぞ?」
環が全くケーキに手をつけていない靖睦に優しく言うも、靖睦は冷たい一言できっぱり返す。
「甘いもんは嫌いなんですよ」
「先輩方に対してその態度は何だ…」
靖睦は再び悟に竹刀で殴られその場に倒れこんだ。
「イヤ…悟君。俺は気にしていないから…」
「いいえ!甘やかしはいけません!我々銛之塚家は代々埴之塚家に仕えてきた身なれど、臣下だからこそ心を鬼にしてでも靖睦を甘えた人間に育てるわけにはいかないのです!これも全て靖睦のため!」
彼には武士道や忠誠心等が色濃くあるようだ。だが若干方向性を間違っている様な気もしなくもない。竜胆は救急セットを取り出して無言の靖睦の手当てを始めた。
「「あのー甘えた人間というならここに最も甘えたな埴之塚家次期当主が」」
光と馨は光邦を指差す。光邦の手には可愛らしいうさちゃん。
「光邦さんは良いのです!崇兄の為す事に間違いがあるはずありませんから」
悟はブラコン。崇の良い所を嬉々と語っていた。どうやら無我を知り多くを語らずらしい。それを聞いて疑うのはホスト部員達。
「それに最近俺思うんすよね。崇兄はもしや日本に生ける最後の“武士”なんじゃないかって…」
確かにモリ先輩は武士の様に見えたりもするが、現代だという事を忘れている。悟のブラコンは盲目を極めている。
「少し弟君の目を覚まさせてやった方がいいネ」
「紅茶にタバスコ入れてやれ」
そう言う光と馨は悟のお茶にタバスコをダバダバと入れ、悟はそれに口をつけた。
「おいしいですね!このお茶も!ピリリとした感じか特に」
――ダメだ。味オンチだ。アホの子だ。アホの子だな。皆がそう思った。流石にそんな物を飲んだら体調を壊すと竜胆は悟からお茶を取り上げ、新しい物を淹れた。
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