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とりあえず近場から見ていこうとなり、服売り場に来たが良いが竜胆はふと気付いた。

「…環。鏡夜は…?」

環が背負っていた鏡夜の姿はどこにもない。あれ?という様に首を傾げる環の頭を竜胆は叩いた。

「「理事長息子の頭を叩いた!?」」

「…た、環…あなたは何を考えているのよっ…きょ、鏡夜はこういう場所には不慣れなのよっ…!目覚めたら知らない所で一人ぼっちでっ…!財布も携帯も無い…これから鏡夜はどうやって生きて行けって言うのよっ…!」

竜胆はその場に泣き崩れるように目を押さえながらしゃがみこんだ。

「「竜胆ねぇ」」

「男装のままその口調はきもい」

「鏡夜先輩の母親か」

そーいう事は言わない!光と馨にピシッと説教をした後、竜胆は立ち上がった。

「環!これから鏡夜を探すわ!あんた達もちゃんと探すよーに!携帯で連絡取り合う事!どっかで遊んでる姿見つけたらただじゃおかないわよ…?」

竜胆は不敵に微笑んだ後、身を翻して歩き出した。その後ろ姿は禍々しい物を背負っている様で皆恐怖を感じたのは言うまでもない。そして竜胆は環が鏡夜を置いて来たと思われる箇所に行ってみたが、そこに鏡夜の影はない。

「あの、すいません。この辺で背が180くらいあって黒髪で眼鏡かけて柄シャツ着た青年を見かけませんでした?」

近くに居た女の子達に声をかけるも黄色い声ばかりで答えが返ってこない。竜胆は小さく溜め息を吐いてから早歩きで鏡夜を探し歩いた。力強く歩いて数歩した時竜胆は立ち止まった。

「…何でこんなに真剣になってるワケ…」

確かに鏡夜の事は心配だ。せめて携帯だけでも持たせれば良かったが、なんて今更考えた所で仕方ない。鏡夜は誰よりもこういう場には不慣れだから探すのよ…。それが妙に自分に対しての言い訳に聞こえた。デパートの喧騒の中で立ち止まる竜胆はまるで取り残されている様に。自分だけが立ち止まって足早に流れている景色を見ているかの様に。鏡夜だって子供ではないのだからなんとかする事は出来るだろう。適当に歩いていれば誰かが見つけるだろう、そう思えば良いのにそれもまた言い訳で。

「……私が寂しいだけなのね」

いつも鏡夜と一緒で。何かあると鏡夜に話しをしに行く。誰よりも鏡夜に頼っているのは私自身。鏡夜が心配なのではなくて自分が一人になりたくないだけ。だから探したくなる。だから会いたくなる。隣に居たくなる。その空気が好きで、貴方が好きで。バカみたいな話をする時も真剣な話をする時も、いつも隣に居たいだけ。


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