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「そう…真実を知らぬ者が模倣品を作れるか?答えは否!」

「まかせろハルヒ!」

「おまえの敵は必ず討つ!」

教頭先生の為にもハルヒの為にも俺達が本物の“食べ合わせ”を完成させて見せる!そして彼等は高級食材に手を伸ばした。ハルヒは持って帰れると思っていた食材達を前に涙を流す。

「「隊長!なんだかんだいいつつプリンのこの食感は利用できそうです!」」

「よし!あらゆる調味料をトッピングしてみろ!」

竜胆はそれから遠く離れ、一人で本に載っている食べ合わせを試してはまずっと眉間に皺を寄せていた。

「…竜胆先輩は避難中ですか?」

「彼らは気付いていないね」

「何にですか?」

「もしかしたらこの食べ合わせを考えた祖先が自分達の先祖かもしれないという事に…!金持ちの道楽かもしれない!だってそうでしょう?“俺らはいつでも食えるから知ってるけど、食えない庶民にそれっぽい味を教えてやろうぜ”ってのが始まりの可能性もある…そんな血が流れていると思うと恐ろしいわ」

その発想力が恐ろしい。ハルヒは竜胆の隣にちょこんと座り今日の食材は諦めようと小さな溜め息を吐いた。

「ねぇ、このキュウリと蜂蜜で――うわっ!」

竜胆が喋ってる途中でどこからかマヨネーズが飛んできた。それがテーブルに当たり、中身が飛び出し竜胆の顔にかかった。そして竜胆はゆっくりと立ち上がり、元凶へ近付いていく。

「コラー!誰だ、マヨネーズこっちに投げたのは――」

「竜胆ねぇ!」

「これ食べて!」

「むっ……うぐっ…うえええええ…!あ、ありえない!せめて食べれる物の組み合わせにしてっ!うげ、鏡夜。水、水取って」

最初は拒否していた竜胆もいつの間にはその輪の中に入っていた。そして気がつけば外は真っ暗。それほど開発をしていたのだが、当然うまく行くはずもなく調理室はひどい有様だった。

「とりあえず“この世のものとは思えない”味には違いない…!」

要するに失敗である。全て使い切った食材にハルヒは笑う気力も起こらない。

「結論から言うと本物の味は本物にしか出せないという事だな」

「「イヤ〜でもどれか一つくらいは長老センセの思い出の味にひっかかるかもヨ」」

「喉にひっかからないといいけどね」

最早スープの欠片もないわけで。

「そうだハルヒ。これだけは余ったから持ってお帰り…」

ハルヒの手には納豆一パック。そして一応調理を終えたスープとも料理とも言えないものを教頭室に持って行ったが、通りすがりの秘書に教頭なら帰ったと言われ、挙句の果てに一週間の海外出張だと言われた。急用かと心配する秘書に対して呆然とする面々の中はハルヒはぼそりと呟いた。

「今日は先生に素晴らしい教えを頂いたのでお礼に伺っただけです」

「教え?」

「はい。“食べ物は決して粗末にしてはいけません”と」

そういうハルヒは目も笑わずに絶対零度の微笑みを浮かべていた。

「ね?先輩方…?」

納豆を持ったハルヒの冷たい笑みがここまで恐ろしいとは思ってもみなかった。そして次の日食べつけない物を大量に食した面々は食あたりを起こしホスト部が休業になったのは言うまでもない。




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