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――作戦その4 中央棟においてはマダムだけではなく紳士の趣味にも気を配るべし


「ほう。バックギャモンかね」

「はい。アラビアン・ナイトに出てくる歴史あるゲームですよ。この部のモットーには社交的教養を身につける事も含まれていますので…日頃より各国の行事や遊び、民族衣装など幅広く研究させて頂いております」

いけしゃあしゃあと言う鏡夜の言葉にハルヒはとうとう苛立ちを覚えた。日頃のコスプレにそんな意味がある事を知らなかったし、最近なんて庶民菓子やら庶民ラーメンの研究しかしていないじゃないか。苦情の一つでも言いたい気分だった。休みたい気分でもローテーションで馬車に乗らなければならない。残りをダンスパーティーにした所でハルヒの疲れはピークに達していた。

「ハルちゃんお疲れさま〜今日はよく頑張ったねぇ〜」

「ハルヒちゃん、チョコでも食べる?」

そんな時第三音楽室の扉がノックされた。誰かと思えば理事長が環を呼びにきたので、来賓に挨拶を、という事だった。そして環は後でなと言葉を残し外へ出て行った。

「ほんとに何でもなさそうですね…一瞬昼ドラ的ドロドロな展開になりかけた気がしたけど夢だったのかな…」

昼ドラ?その言葉を鏡夜が庶民の主婦向けのドロドロドラマだと説明した。そんなものがあるなんて知るはずがない。

「あーまぁドロドロっちゃあドロドロだけどね――」

「え…」

「だからさ、ホントに元々は妾の子さんの子なのヨ。殿って」

「それで環のお母様は現在行方不明中」

その言葉にハルヒは目を見開いた。

「二十数年前のことです。須王家の先代当主は若くして他界。理事長は母の決めた相手といわゆる政略結婚し早々に跡を継ぎました」

「しかしながら数年後出張先のフランスで出会った貴族令嬢と理事長は本物の恋に落ちてしまいました」

「「そこで産まれたのが、我らが殿というわけです」」

本物の恋に気付いただけなのに世間はそう簡単には上手く行かない。

「理事長はそれを機に正妻と離婚。殿と殿のお母さんを日本に呼ぼうと思いました。しかし、お祖母様は大反対」

「タマちゃんのお母さんは病弱で、日本で暮らすには支障があった事もあり、タマちゃんはそのまま14歳までフランスで育ちました」

いつの間にか紙芝居仕立てで光邦は説明し始めた。


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