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「やあ!藤岡ハルヒ君だね?優秀ぶりは常々耳にしているよ」

環は完全に遊ばれていただけだった。落ち込む環を他所に学院生活はどうかと、困っている事はないかと理事長はハルヒに質問を浴びせる。

「ちなみに君ウェブスターに興味はあるかな?」

「ハァ…おかげさまでだいぶ慣れました。特にお耳に入れる程困った事もありません。ジーン=ウェブスターの事なら“足長おじさん”を読んだくらいで…」

そして気がつくとハルヒの手の上には便箋。それはストレートに定期的にお礼の手紙を書け、という事だった。奨学生制度を採用したのはただ単に足長おじさんになってみたかっただけらしい。

「女の子なのを隠している事情も大体把握してるよ、こんなに可愛いのに環はヒドイ男だねぇ?そういえば柊君もいるではないか。いいんだよ、困った事があれば何でも言ってくれて」

「大丈夫です。ありがとうございます、理事長」

お会いするのはどれぐらいぶりだろう、こんな無茶を通してくれているのだから感謝はしているものの自分の力でこなさなければならない事だ。竜胆は小さく頭を下げた。

「ハルヒと竜胆に無駄に近付かんで下さい!忙しいのでもう失礼します!皆の衆行くぞ!」

環は自分の父親の行動に怒り、皆を連れて外へ出て行った。竜胆は一人校長室から呼ばれた声に立ち止まった鏡夜を見て、そのまま壁によりかかり話を聞く事にした。

「鏡夜君。この度は見事だったね。最終戦で目的地を誤算した連中をあえて泳がせ、同時刻に屋上に到着しデットヒートに持ち込むよう仕向けたもの全て君の計算通りなのだろう?ギリギリまで白熱してこそ勝利にハクがつくというものだからね」

「…理事長の白紙の手紙にも救われました。おかげで混乱して手間どりましたからね。あまり早い解決は望みませんでしたから」

「君のお役に立てたなら光栄だよ。なにしろラストで環に王冠を取らせたのも君のシナリオ通りなんだろうからね。勿論半分は君自信の為なんだろうが…学祭当日はうちの母も来る。私もいい加減環を本邸に入れてやりたいからな」

それを聞いて思い出すのは環の事情。本邸に入れてもらえない悲しい一人息子の話。環も戦っている。誰も憎まずに自分の育った環境を恨まずに。そんな友人を前にした時自分も環境を恨めなくなっていた。竜胆は話を聞きながら目を閉じた。


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