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「…限りなくいたたまれない子みたいな空気やめてほしいんですけど」

「いいか?ハルヒ。小規模とはいえこの体育館にはどうやらいくつかのベニス主要スポットが再現されている。例えばダリオ宮、サン・マルコ、ドゥカーレ。それにサンタンジェロ、サンタ・マリア・デラ・サルーテ」

そこまで言われてハルヒは地図を見ながらようやく気付いた。そこには聖母と天使があったのだ。

「おそらく王冠は体育館で2つの間にあるスポットアカデミア橋に隠れている…!」

本当にそれだけだろうか。ヒントの中に絞れる箇所は他にもある。それを一番に気付きそうな鏡夜が何も言わないのだから私は何も言わない、そういうように竜胆は口を紡いだ。

「そういえばハルヒ。2種類の脅迫状の犯人は別人と推理したって?ちなみに犯人の目星は?」

「はい…新聞の切り抜きの方なら多分…生徒会書記の満山香南さんです」

ハルヒの断言に竜胆は思わず感心して頷きそうになった。九瀬は生徒会にコネがあると言い、生徒会所属の満山に協力を頼みアメフト部に有利な舞台を作り上げた。そしてハルヒが昨日見かけた時合意の上の協力者には見えなかったと言う。

「思うに満山さんは九瀬先輩に逆らえない立場にあるんじゃないでしょうか?命令通りに動きながらも本当は九瀬先輩を恨んでいて…密かに九瀬先輩の最大の目的である“ホスト部との対決”を邪魔しようとしたんじゃないかと…」

「ずいぶんと強引な予想だが…恨んでいると思う根拠は?」

「満山さんの家は九瀬のライバル会社なんです。でも近年は業績が落ち込んでいて九瀬に合併の話を持ちかけられているという噂が…」

――それだ!会社の救済をエサに脅されている可能性がある。そうと聞けば環は放っておけるはずがない。そんな環を冷静に見ているのは竜胆。どうも自分の親友達は正反対の様だ。すぐ熱くなる環とその熱さを内に秘めている鏡夜。そんな二人の間に挟まれて竜胆は笑みを零す。当然自分がいなくても成り立つ二人の関係。だが、自分がそこに入った事で何か少しでも影響があれば良いな、ただそう思った。竜胆は空を見上げて呟いた。

「今日は天気が良いな…」

まるで天が味方してくれているような天気。誰もが真っ直ぐ歩けるように照らす太陽に恋焦がれるヒマワリは今日もどこかで太陽を見ているはず。




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