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ハルヒの突然の変わりぶりはすぐに話題になった。実はとても可愛らしい、そういうものだ。テクいらずの天然さでのっけから指名を取っていく。これで少しは借金を返すのも楽になるだろう。だが、その姿を見て喜ぶ者だけではなかった。

「藤岡君、随分素敵になったわね」

「そうなのよ〜私もあれは原石だと思って目をつけていたの!」

今度指名してみようかしら、えぇーちゃんと戻って来てよ?竜胆と女の子は笑いながら話をする。

「…あ、あの、牡丹の君。相談したい事がありますの。…良いかしら?」

竜胆は目を細めた。その話を聞いてお礼を言ってからなんとかすると立ち上がった。そして鏡夜のもとへ向かい、視線はハルヒ、そして一人の女性に向けたまま鏡夜に話し始める。

「了解。証拠集めに入る」

「頼んだわ」

「それにしても相変わらず情報が早いな。俺の所に何も入ってきてないぞ?」

「あら、牡丹の君の情報網を侮らない事ね。どんな監視カメラよりも人の目の方が確かなの」

ヒラヒラと手を振ってから竜胆はハルヒに近付いた。ハルヒにも忠告しておくに越した事はない。

「ハルヒちゃん」

「え?…あ、はい…?」

この人に初めて名前を呼ばれたとハルヒは驚いた。

「何かあったら相談して。牡丹の君が相談に乗ってあげるから」

「はぁ…?」

ハルヒはわけも分からず頷くだけだった。この人とは個人的にそこまで喋っていない。まぁ、喋る事もあまり無いだろう。いつも飄々した態度で女装と男装時では喋り方が違う。だけど、今は女装のまま普段より低い声だったのは確かだ。ホスト部員は謎の人達が多いけれど、それとはまた別の謎が多いのはこの人だった。

「「はーい!“どっちが光くんでしょうか”ゲーム!」」

元気の良い声が響き渡り、竜胆はそちらに目をやった。

「ハルヒくんはどっちだと思う?」

「向かって右が馨で左が光」

「「はずれでーす」」

「外れてないよ、よく似てるけどやっぱり違う」

その断言を聞いて竜胆は微笑んだ。やっぱり私の目は正しかったようだ。もうそろそろお役御免かしら?それは少し寂しいけれど、応援してあげようか。この子なら大丈夫だ、と竜胆の勘が告げる。それは鏡夜や環と出会った時と同じ勘。

「正解したハルヒちゃんにはお姉さんからケーキのプレゼントー!はい、どうぞ」

ハルヒはそのケーキをじっと見る。何でこの人が?

「あら、ケーキはお嫌い?」

「いえ、ありがとうございます」

竜胆はそれを聞いてハルヒの頭を撫でた。そして視界に入るのは指先の絆創膏。

「ハルヒちゃん、それどうしたの?」

「ちょっとカッターでうっかり…」

うっかりねぇ…。竜胆は目を細めた。相談してと言ったはずなのだが、これは相談するに値しないという事なのだろうか。自然と出てしまった溜め息を慌てて飲み込んだ。


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