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「ありがとね」
竜胆はひらひらと手を振ってから歩き出した。だいぶ情報も集まってきた。まずあの脅迫文に使われた切り抜きの新聞。遡った数ヶ月で発売された雑誌。主に経済新聞。一部だけスポーツ誌も混ざっている。そして柑橘系の匂いは香水でも本物のオレンジでもない物の匂い。アロマオイルだろう。しかもブランドの品でそう簡単に手に入るものではないと、元から持っていた可能性が高い。そう考えると犯人は女性の可能性が高くないか?でもまだ分からない。男性でもアロマを使う人間は居るだろう。ただ、何故オレンジなのか。オレンジ=で一致する人物はいる。しかも、ホスト部に私怨を抱いている事も。ならばその人物に罪を着せようとしている人物が居て、それが女性。ならばオレンジ=とある人物に恨みを持っている可能性もある。徹底的に調べるのはそのオレンジ=とある人物。今話を聞いて出て来たのはその人物の婚約者だ。竜胆はそれを頭の中で整理しながら中庭を歩いた。
「「竜胆ねぇ!」」
ん?そんな声が聞こえて竜胆は顔を上げた。そんな大声で本名を呼んでくれないで。しかも返事しちゃったじゃない。二階の窓から顔を出したのは光馨。
「おぉー!光馨何してんのー?」
「そりゃ」
「こっちの台詞ダヨ」
「ちゃんと学祭の準備しなよー」
「「竜胆ねぇこそ!」」
随分と楽しそうな光と馨を見た。光と馨はハルヒ以外の人物に呼ばれて手を振ってから窓際からいなくなった。いつも窓際で二人だけだった世界がいつの間にか広がっている。おめでと、竜胆は小さく呟いてから自分のクラスへゆっくり歩いて行った。
「中央棟サロンの使用候補団体が発表になったぞ」
そんな声を聞いてハルヒは首を傾げた。中央棟サロンを取る事に何の意味があるのだろうか。聞いてみれば場所取りだった。来客の目にもつきやすい、注目度抜群のそれを取るのに皆必死で争奪戦に臨んでくる。桜蘭祭最大の隠れたイベントというのを聞いて更に面倒そうだと思ったハルヒだが、リストを見て呆然とした。
「当然うちの部もエントリーしているが?それが何か?」
鏡夜に聞けばそれを当然の様に言い放った。
「去年はチェストーナメントで決めたんだっけねぇ〜」
「そうでした。ホスト部は決勝で生徒会に負けたんです」
「へえ…勝ってほしいわけじゃないけどなんとなく意外な…」
この実力と自信に満ちたトップ集団が負ける事等あるのか、ハルヒは負けたという事実に驚いた。
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