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「で?ストーカーと化したのか。どうする?こちらでなんとかしようか?」
四六時中見張られている気分だった。どこに居るのか私の視界の端に出没する彼女は話しかけてくる事なく私を見張っている。
「…鏡夜の“こちら”は後が怖い」
「じゃあ、どうするつもりだ」
「…だから相談してるんだよ。何か善後策は無いかと」
このまま観察が続けば女だと言う事がバレてしまう。お陰で最近着替えるのでさえ最大の注意が必要だ。今は人の目よりも彼女の目の方が気になってしまう。
「……で、彼女の行動を悪化させたお前の一言は何だったんだ?」
「……ごめん、俺実はホモなんだ」
言った通り繰り返しただけだ。が、二人の間に不自然な間が流れた後、鏡夜はとてもとても深い溜め息を吐いた。
「本当に男が好きなのか確認する為に彼女はお前のストーカーと化した。…悪循環だったな」
「知ってる。だから後悔してる」
普通ならば、え…ホモだったの…?うわ。で、終わりだと思っていた。だが私は忘れていたのだ。桜蘭に通うお嬢様方はそういうのが好みの人、または平気で受け入れられる人がいる事を。禁断の双子愛然り、双子に挟まれる美少年然り、四角関係になりうる王子また然り。ここは本気でそう見せるしかないのかもしれない。今、彼女は本当にホモなの?断る口実じゃないの?そう疑っているに違いない。
「鏡夜」
「お断りだ」
「…何で。だってまず無理でしょう?考えても見て。環は女性に本気で愛を囁く為にホモには見えない。ハニー先輩とモリ先輩は二人セットだからその壁は越えられない。光と馨はお互い依存だから無理。ハルヒちゃんと自分じゃ完全にレズでしょう」
だからこそ空いているのは鏡夜だけなのだ。ここで鏡夜がホモ疑惑の噂が広まったとしてもあくまで噂でお客様がきゃっきゃっするだけのはず。
「…鏡夜しか頼れないの。助けて。じゃなきゃ自分本当にバレる。ここからいなくなるよ、本気で。時間は無い」
だってあの子盗聴とか盗撮までしそうな子なんだもの。視界の端に目をやった。そうしてから私は鏡夜の目をジッと見た。それを気まずそうに逸らす鏡夜。
「…はぁ。分かった。で、俺は何をすれば?」
鏡夜はこの目に弱い事は既に知っている。
「黙って自分に攻められて」
「俺が受け側か…?」
「攻めてもいいけど鏡夜に出来るわけ?あの子にホモだと思わせる必要があるくらいの演技」
その言葉に鏡夜はイラッとしたのか立ち上がり自分の腕を急に掴み上げた。そして窓に押し付けた。急な行動に私は息を飲んでから鏡夜を睨み付けた。
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