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「…そういえば、猫澤先輩は以前からやたらと環に興味があるようだったが…」

「確かにそうだね。絡むのはいつも環だった」

「それはもしかすると心のどこかで妹の“理想の兄像”であるおまえに憧れを…」

それを聞けば環は指を鳴らし崇に猫澤の確保を命じた。

「光馨!室内をできるだけ暗く!ハニー先輩竜胆!間接照明とろうそく!鏡夜は当分のお客様のキャンセルとおわびを!ハルヒは霧美ちゃんのお守りを」

泣きそうになる霧美に向かって環は優しく微笑んだ。

「ごめんよ霧美ちゃん…俺は君のおにいちゃまではないんだ。俺は…いや俺達はおにいちゃまではなくおまわりさんなのだ!」

そう言えば今日は警察コスプレだった。竜胆も慌てて敬礼ポーズ。それに呆れるのはハルヒだったが、今更どちらもそれを気にしたりはしない。

「困った生徒を救うのが我々の使命!ましてや想い合う兄弟同士が一緒にいられないなどあってはならぬ大問題!猫澤先輩!あなたには徐々に光に慣れる訓練をして頂く!そして同時に俺自らの指導をもって!霧美ちゃん好みの立派な王子キャラに改革させていただこ――う!」

まぁ、キャラを変更させる必要があるのか分からない。環は純粋に思いあう家族が会えない事が寂しいのだろう。そう竜胆だってそうなのだ。自分の半身は今も遠い地で頑張っている。小さい頃から離れて暮らしていたのだから、寂しくないと言ったら嘘になる。でも、これが約束だから。だからこそ会えるはずの家族が会えないのは寂しい。

「…蝋燭に揺れる君の黄金の髪…輝く象牙の肌…月光に照らされた一輪の花よりも神秘的なその微笑は…そう…まるで…あたかも呪われし蝋人形のごとき禍々しさで〜〜」

その瞬間環は思い切り猫澤の頭をハリセンで引っ叩いた。

「オカルト用語は禁止と何度言えばわかるんですか!モリ先輩NGワード追加!」

崇がホワイトボードにNG用語を書いていく。それはまだまだ増えそうだった。猫澤の明かりに慣れる特訓はなかなかスムーズには進まない。

「し…しかし私の持つ語彙はこういった類のものばかりで…」

「口答えも禁止!」

そういうと環は持っていた懐中電灯で猫澤を照らした。それにひぃと声をあげる猫澤。

「超スパルタじゃん殿」

「後で呪われるかもとか考えないんかね」

「そもそも途中までは良い方向だったのに、いつの間にか方向性変わってない?妹相手にどうして口説き文句?」

光馨、竜胆の三人は環の行動に首を傾げた。

「大体言葉に心がこもってない!もっと練習相手を霧美ちゃんと思って!」

「そうはいいますが須王君…霧美はこんな土気色の顔では…」

練習相手は環のクマちゃんにウィッグを被せ、服を着せただけだった。

「問答無用!心の目で見るのです!」

「「ハーイ、殿〜!そんじゃコレをハルヒだと思って愛を語って下さーい☆」」

光と馨が持ってきたのはハルヒ人形。光と馨の二人は既に飽きている。そう思った。環はというと心の目発動で人形を口説こうとしているから面白い。

「気色悪い事して遊ぶ暇あるなら霧美ちゃんの相手も少しはしてくれませんかね」

ハルヒはどうやらこの三日間で50冊以上の少女漫画を朗読させられ疲れきっていたのだ。

「おっ、おにいちゃああ」

部屋の暗さを見て霧美は涙を零す。それに慌てて近付くのは猫澤ではなく環だった。霧美を抱きかかえて微笑めばそこにはもう涙はない。そんな二人を見て猫澤は寂しくなった。

「猫澤先輩」

「…柊君」

「兄弟です。いつか絶対分かり合えます」




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