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「どうしましょう、鏡夜先輩」

そうなると頼りになるのは鏡夜だった。自然と鏡夜の周りに集まる。

「ひょっとして高等部に実際お兄さんがいるんじゃないか?」

「それじゃタマちゃんをお兄ちゃんと間違えて〜?」

「でも高等部に殿に似た外国人風味のヤツなんて…」

「…イヤ、一人だけ知ってるよ」

「きりみ〜〜…霧美〜〜…」

扉の隙間から彼女を呼ぶ声はどこか震えている。その方向を見れば意外とおなじみの黒魔術部部長の姿。いたァ―――!皆は心の中で叫んだ。彼はヅラを取れば綺麗な金髪だった事をようやく思い出した。だが彼は実の妹である霧美に泣かれ、落ちた気分を隠せない。相当嫌われているようだった。

「「そんなカッコしてるからじゃん?脱げばソレ」」

光と馨がヅラとローブを剥ごうとするも猫澤は明るい所が苦手。ならば暗がりで脱がせれば、そう思いカーテンを閉めると泣き出す霧美。

「…梅人坊ちゃまは明るい所が命取り」

「霧美お嬢様は暗い所が大嫌い…」

どこからか現れた猫澤家の使用人がそう告げる。そしてその使用人の話によれば猫澤家では何百年かに一度梅人の様に闇に魅入られた子が生まれるという言い伝えがあったりなかったり。その体質のせいで猫澤は妹に近付くだけで泣かれてしまう始末。そして霧美は肖像画でしか知らない兄におとぎ話の王子の様な兄に恋焦がれ、高等部に兄がいると知れば時折探しに行ってしまう。王子物の童話等で宥めていたが、ネタがつき最近は少女漫画にまで手を出してしまったのだ。それが先ほどの原因だった。

「それじゃ刺し身ちゃんは猫澤先輩がお兄さんだと知らないんですか?」

「「切り身だろ」」

「霧美です〜〜…」

何度教えても霧美はそれを認めようとはしないらしい。それもそうだ、ギャップがあり過ぎる。

「そんなのネコちゃんが悲しいよォ」

「はい…ですから…霧美が暗闇を愛してくれる様にと毎晩お祈りを…」

「「イヤ逆だろ。アンタが明るいとこへーキになれヨ」」

「そうですよ。霧美ちゃんの事を思うのなら自分が頑張るべきです」

それが兄弟と言うものだ。竜胆は胸を張って言う。その後ろで霧美は環に縋りおにいちゃまといっしょがいいと泣いていた。そんな姿を見て猫澤は席を外す。

「…いいんです…須王君…どうか…霧美を可愛がってやって下さい〜〜!」

「猫澤先輩!」

「妹を何だと思ってんだー!あんたはー!」

竜胆は声を張った。どいつもこいつも妹を犬猫の様に扱って。それはよくないと思う。竜胆は霧美の頭を優しく撫でた。


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