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「ちょっと目離したスキにいーカンジじゃん」
最初はギクシャクしていた(主に光だけ)が、徐々に雰囲気がよくなっていた。それは傍目から見ると仲良しカップルのよう。
「光がエスコートしてるかは怪しいがな」
「…帰ろっか。ここでヘタにバレても台無しだし。それにこれ以上ここにいてはいけない人もいるしね」
環は影で泣いていた。そんな環をなんとか引き連れて美鈴のペンションへと戻った。
「へぇ。ジャムクッキーってそうやって作るんだ。知らなかったです」
「まぁっ!竜胆ちゃんは女の子なんだからお菓子作りは知っておくべきよッ!」
「そういうものなんですか?是非教えて下さい!」
泣きながら落ち込むは時折空を見上げる環。馨は笑顔を見せるもたまに心配しながら考える様に。鏡夜は読書。光邦と崇はいつでもティータイムだ。竜胆は美鈴からクッキーの作り方を教わっていた。
「ねぇ!鏡夜!見てよ、このジャムクッキー!初めて作ったのよ?その割には焦げていないし、美味しそうじゃない?」
以前れんげが作ったクッキーの様に炭化していないし。見た目も普通のクッキーだった。竜胆はその焼き立てを見せるようにミトンで鉄板を掴んだまま鏡夜に見せに来たのだ。笑顔で微笑むその姿が可愛らしいと思ったが良い言葉が思いつかなかった。
「そのまま転ばないと良いな」
「……鏡夜って本当に失礼ねっ。私はそこまでドジじゃないわ」
竜胆は少し頬を膨らませながらキッチンへと戻って行った。その後ろ姿を鏡夜はぼんやりと見送っていた。今の場合はどうすれば良かったのか、なんて言ったら良いか分からなかった。いつも悪態吐いてしまう。よくやったなと褒めてやれば良いのか?そんな事をしたら逆に気味悪がられる。自分の立ち位置が把握出来ていなかった。竜胆が作ったクッキーは好評でそれをお茶請けにしながら光とハルヒの帰りを待っていた。天気がどんどん悪くなってくる中雷が近くへ落ちた音がペンションに鳴り響く。
「スゴイ稲妻――」
「ヒカちゃん達雨宿りしてるかねえ」
「車でも拾って戻って来る途中かもしれませんよ」
「そうね、良い時間だもの」
時刻は夕方。そろそろ帰って来るのだろうと思っているのだが環は落ち着かないように行ったり来たり。その時馨の携帯が音を立てた。その相手は光だと言う。
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